アドビ システムズは9月15日、都内で6回目となるデジタルマーケティングカンファレンス「Adobe Digital marketing Symposium 2015」を開催した。同カンファレンスには約1800人が参加し、日本企業に求められるデジタル変革について全日本空輸の事例や「Adobe Marketing Cloud」を使用した最先端のソリューションを紹介した。
基調講演の最初に登壇した代表取締役社長の佐分利ユージン氏は「6回目のカンファレンスを迎え、近年ではデジタルマーケティングへの関心が益々高まっているのを肌で感じている。その間に多くの変革があり、モバイルデバイス、そしてソーシャルメディアが普及し、私たちの生活とデジタルが切り離せない存在となっている。そしてIoT時代が到来し、これからユニークなデバイスが出てくるだろう。このような状況下で企業、個人も変革の時を迎えており、新たな可能性が生まれている。顧客体験を重視した動きは東京オリンピック・パラリンピックに向けて活性化するのではないかと考えている。競技をオンラインで視聴する人々やそれに向けた動画配信、広告投資の拡大も期待されており、日本企業にとってマーケティングは決定的な差別化の要素になる」と語った。
次に登壇したアドビ システムズ デジタルマーケティング事業部門 ストラテジー、ビジネスデベロップメント&マーケティング担当 バイスプレジデント ジョン・メラー氏によると再構築の途上にある日本のマーケティングやビジネスは東京オリンピック・パラリンピックを踏まえ、大きなチャンスを抱えている一方、消費者の振る舞いは複雑化し、テクノロジーがマーケティングの定義を従来の考え方から変えているという。
テクノロジーや消費者の振る舞いが変わる、ということはマーケティングの性質も変化しているということを意味する。そのため、今では消費者に対し企業全体としてどのように組織化していくのか、どういった接点でどのように企業自体をプレゼンしていくのかということを再構築しなければならないと同氏はいう。
ジョン・メラー氏は、「マーケティングは多くの部門の一つではなく、デジタル変革の中心に据えられており、消費者は企業、ブランドと多くのタイミングと接点でやり取りをするようになっている。消費者の期待値を表現する重要なものとして一貫性と継続性の2つがある。一貫性は、消費者が自分の要望を実現すること、継続性は経験の集合体のことで分散ではなく、デバイスやロケーションをまたいで継続した形で経験が融合している状態だ」と語った上で、「消費者は企業、ブランドとやり取りする際に一貫性と継続性があることを期待しており、デジタル化した様々な状況下で消費者の期待値に見合わなければならないほか、消費者と企業、ブランドがコミットし、常に両者が評価し合うことが望ましい関係性となっている。関係性の構築に意欲的ではない企業は消費者を落胆させ、結果として消費者は競合他社に関心を寄せる」と指摘した。
そのような中で企業としてデジタル変革のプロセスを開始するには、デジタルマーケターが構築した原則をベースに顧客体験をエンタープライズ全体に届けることだ。例えば店舗内における体験などは、すべてデジタルマーケティングの原則に基づいていなければならないため、接点はリアルタイムかつパーソナライズされた形で提供する必要があるという。
一方、マーケティングは顧客体験の中心にあるため、社内における変革をどのように促すのか、課題にどのように立ち向かってくのかといった話は会社によってケースバイケースとなっているため対処は難しく、一貫性はない。しかし、デジタル変革は不可能ではなく、デジタルマーケティングが先頭を走るチャンスとなっており、金融サービス業や製造業、小売業、公共事業をはじめ、あらゆる業界にチャンスは存在し、変革こそが企業を導くとジョン・メラー氏は指摘。
そして最後に「我々のマーケティングテクノロジーは『包括的』『統合』『実現力』3つの原則に沿っている。包括的はデータ、コンテンツ、ツール、アルゴリズム、すべてを連携させ、パーソナル化した経験を提供する。一つで多くの機能が提供できる包括性が必要でアナリティクス、コンテンツ管理、広告、Eメールなど一つだけでは良くない。また、統合では一つのチャンネルからデータを他のチャンネルのデータなどに、あらゆるチャンネルと統合するとともにプライバシーを尊重しつつ投資を最大限に活用し、インテグレーションではマーケターにとって意味を成すワークフローに従うことだ。さらに実現力では、マーケティングクラウドは単なるデータリポジトリ、コンテンツリポジトリでもないためデータとコンテンツにミリ秒単位でアクセスできなければならない。包括的、統合、実現力の3つの原則はマーケティングクラウドで我々が達成したことだ」と述べた。