2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されることもあり、東京の都心部ではいくつもの大規模な再開発プロジェクトが進められている。そこで本企画では、街ごとの再開発プロジェクトを追いながら「ポスト・東京オリンピック」の東京の姿をのぞいてみたい。
2019年、渋谷駅真上に地上230mの超高層ビルが誕生
第1回目となる今回取り上げるのは「渋谷」だ。その中心にある渋谷駅は、JR東日本、東急、京王、東京メトロの鉄道路線が結節する、言わずと知れた全国屈指のターミナル駅。バスターミナルも都内最大級であり、この渋谷駅を中心に街が広がっている。
2013年3月16日には、東急東横線と東京メトロ副都心線が相互直通運転を開始したことで、東横線の終着駅だった地上の渋谷駅は姿を消し、地下へと移行。これにより、みなとみらい線元町・中華街から横浜、渋谷を経由して、東京メトロ副都心線、東武東上線、西武有楽町線・池袋線までがつながり、所要時間の短縮などで利便性が大幅に向上した。
その一方で、新宿、池袋という、渋谷に匹敵する巨大商業都市への通過点ともなったことから、都市間競争が激化しているとも言われている。したがって今後、より多くの人びとの足を渋谷へと向けさせられるかどうかは、再開発の行方にかかっていると言ってよいかもしれない。
現在、渋谷エリアで進められている再開発計画は、大きく4つだ。
その1つ「渋谷駅地区駅街区開発計画」の目玉は、渋谷駅の直上に建設予定の東棟、中央棟、西棟の3棟から成るビルである。これらのうち、2019年度に開業を予定している東棟は地上47階地下7階・高さ約230mという渋谷では随一の超高層ビルである。東横線、JR線、銀座線に直結し、最上部には屋外と屋内からなる日本最大級の展望施設が設置される。東棟のオフィス部分は賃貸面積約7万3000平方メートルと渋谷駅周辺では最大クラスとなり、店舗部分も面積約3万平方メートルの大規模商業施設。ほかにも、クリエイティブ・コンテンツ産業のイノベーションを促進する交流施設や、東口立体交通広場、防災・環境機能も整備される予定である。
地上10階地下2階・高さ約61mの中央棟と地上3階地下5階・高さ約76mの西棟は、いずれも2027年度の開業予定となっている。また、この計画では、東西の駅前広場をつなぐ自由通路の拡充、アーバン・コアや宮益坂上方面・道玄坂上方面をつなぐスカイデッキなども整備される予定となっている。
大規模な商業施設やオフィス、ホテルが続々とオープン
2つ目は、かつて地上にあった東横線渋谷駅のホーム/線路跡地を利用する開発計画である「渋谷駅南街区プロジェクト」。このプロジェクトでは、地上35階地下5階・高さ約180m延べ床面積約11万7500平方メートルの超高層ビルが2017年に開業する予定で、ビルの高層部にはオフィス、中層部に約180室のホテル、そして低層部には飲食店を主とする商業施設が整備される。
あわせて、渋谷川の清流復活水を活用した「壁泉」による潤いのある水辺空間や約600mにわたる緑の遊歩道整備なども、東京都や渋谷区などとの連携によって整備されるという。
3つ目の「渋谷駅地区道玄坂街区開発計画」では、地上17階地下5階・高さ約120mのビルが2018年度の開業を目指している。ビル1階の一部には、国際空港へのダイレクトアクセスを可能にする空港リムジンバスの発着場を含めたバスターミナルが設けられる。そして中低層部に配置される商業施設には、国内外から訪れる人々を対象とした観光支援機能も整備。また高層部はオフィスとなる。
最後の4つ目は「渋谷駅桜丘地区再開発計画」である。渋谷駅中心地区の都市基盤整備を完成させる重要なプロジェクトとして位置づけられており、周辺再開発と連携した縦動線アーバン・コア、歩行者デッキ、ネットワークの整備などを行う。また中・高層部にオフィス、低層部に商業施設、さらに住宅等なども備えたビルも2020年に開業する予定となっている。
これら4つの再開発プロジェクトが完了すれば、渋谷の風景も今とは大きく変わるはず。仕事、ショッピング、観光・レジャーなど、さまざまな目的でこの街を訪れる人々に、未来の渋谷がどのような顔を見せるのか、今から楽しみだ。
小池 晃臣
都市ジャーナリスト/株式会社タマク代表取締役社長
地方自治専門誌と企業IT ビジネス誌での編集者経験を生かし、地方行政、地域振興、防災・セキュリ ティ、行政+ITなどを中心フィールドに取材活動を展開中。