富士通と富士通研究所は9月8日、毎秒数十ギガビットの高速無線通信を実現する300GHz帯小型受信機を開発したと発表した。
周波数が100GHzを超える電波はテラヘルツ帯と呼ばれ、現在の携帯端末で扱う周波数帯の0.8~2.0ギガヘルツ(GHz)に比べて電波を使用できる周波数の幅が100倍以上と広く、これにより通信速度も100倍に高まると言われている。
これまで開発されたテラヘルツ帯に対応する高感度受信増幅チップは、受信機にすると受信増幅チップを実装したモジュールと外部アンテナの個別構成となるためサイズが大きく、携帯端末への組み込みは困難だった。
同社は今回、受信増幅チップとテラヘルツ帯のアンテナを低損失で接続し一体化する技術を開発し、これにより、従来に比べて受信機の大きさを約10分の1に小型化し、携帯端末への搭載が可能になった。
具体的には、ポリイミド基板の低損失伝送技術を利用することで、適用可能な周波数をテラヘルツ帯まで拡張することに初めて成功したという。
今回開発した技術を用いることで、スマートフォンなどの携帯端末で毎秒数十ギガビットの大容量通信ができることから、小型の端末を用いて4Kや8Kと呼ばれる高精細映像の瞬時伝送が可能となり、毎秒数十ギガビット級のKIOSK端末型のダウンローダなどを実現できる。
また、携帯端末間の瞬時データ交換や携帯端末とサーバ間の瞬時バックアップといった応用へも展開できるとしている。
富士通と富士通研究所は、2015年度中に今回開発した小型受信機を使った毎秒数十ギガビットの高速データ転送実験を開始し、本技術の2020年頃の実用化を目指す。