日本マイクロソフトは9月2日より、ザ・プリンスパークタワー東京で「FEST2015」を開催している。これまで個別に開催されていたThe Microsoft Conferenceやマイクロソフト ジャパン パートナー コンファレンス、Microsoft Dynamics Forumを統合、発展した大型イベントで、初日の2日は大勢の来客で会場が溢れんばかりとなった。当日のキーノートセッションの様子を報告しよう。

キーワードは「変革」

日本マイクロソフトは7月1日付けで大幅な人事異動を行った。長年社長に就いていた樋口 泰行氏が会長となり、変わって平野 拓也氏が社長へ就任。FEST2015初日のキーノートセッションは、注目の2名によるプレゼンテーションがメインとなった。

まず、壇上に立ったのは現社長の平野 拓也氏。

「本年度においてはマイクロソフトのデータセンター開設、そしてMicosoft Azure、Office365、Dynamics CRM Onlineの3つのサービスの提供がありました」と現状報告から語り出した平野氏。

クラウドサービスの加速はこれからも強まる傾向がある中、満を持してデータセンターを起ち上げた意気込みが伝わってくる。

日本マイクロソフト 代表執行役 社長 平野 拓也氏

また、ワークスタイルの変革も同社にとっては大きなテーマだ。これに無くてはならないデバイスとなりつつあるのが、Surfaceシリーズに代表されるWindowsデバイスだろう。

「Surfaceに象徴されるような"2-in-1"という新しいカテゴリの製品が主張を強めています」という平野氏。最新のSurface Pro 3は、前モデルのSurface Pro 2と比べて初日だけで25倍もの引き合いがあったのだという。ワークスタイル変革に対して、市場も大いに注目していることが分かる数字だ。

これまでWindowsを前面に出してきたマイクロソフトだが、ここへ来て同社のビジネスも変化しているのだという。

「設立して40年が過ぎようとしています。設立当時に比べれば、一日のうち複数台のデバイスを使うユーザーが増え、クラウド環境も非常に発達しています。そんな中、マイクロソフトとしては、すべての個人とすべての企業がより多くのことを達成できるようにするビジョンを掲げています」とした平野氏。これまでの振り返りとともに、「Windows以外にも積極的にチャレンジャーとして取り組んでいく状況にあると思います」と決意も新たに多方面へ取り組む姿勢をアピールした。

マイクロソフトの2015年度を振り返る平野氏

2016年度のフォーカスポイント

「プロダクティビティとビジネスプロセスという観点では、特に日本おいて懸念されている少子高齢化、市場の成熟、働き手不足などを受け、国際的な競争力という面でも大きなプレッシャーが生まれています」と語る平野氏。

これに対応するには先ほども触れたワークスタイル変革が必須となる。

「弊社ではテレワークウィークを設けていまして、初年度は弊社のみ、昨年は32社が参加していただけました。今年度は実に651の組織が参加することとなり、大きな広がりをみせました」と報告する平野氏。

この注目度と同社に対する期待度の高さを受け、「投資も続けますし、徹底的に進めたいと考えています」と同氏は力を入れる姿勢を見せた。

また、好調が報告されているWindows10に関しても引き続き注力するという。

「Windows10では想定していた目標値を大きく超えるインストールがありました。Windows10においては、PCだけでなくタブレット、スマートフォン、ウェアラブル端末などに関しても力を入れていきます」(平野氏)

Windows10の評価も高まっている中、今年は搭載デバイスに関してもさらに広がりを見せてくれそうだ。

また、クラウドもマイクロソフトの重点領域の一つだ。

「インテリジェントクラウドに関してですが、2020年までに750億個のデバイスが存在するという統計があります。これだけのデバイスが独立して動くことはありません。必ずどこかと繋がって価値を見いだすしか無いのです。クラウドの世界では、いかに付加価値を見いだしていくかという部分にエネルギーをかけていきたいと思います」(平野氏)

マイクロソフトによるデータセンターとパートナー企業の組み合わせにより、様々なサービスが生まれることが予想される現在、付加価値というものがいかに大切になるか、今後の同社のサービスの内容に興味が尽きない。

3つのキーワードに絞って今年度のフォーカスポイントについて解説する平野氏

この後、パートナー向けの情報をメインにプレゼンテーションを続けた平野氏に続き、会長に就任した樋口氏が壇上に呼ばれた。

日本の潮流をくみとったビジネスを推進

「7月1日より、会長へ就任した樋口です。会長になってもまだ出てくるのかと思う人もいるかと思いますが、そういうことです」と、ジョークを飛ばして会場を沸かせた樋口"会長"。

同氏は「日本という地でビジネスをさせて頂く以上、この国の課題や方向性などを見定め、国と連携して始めてみなさまに認められる会社になると思っています。会長としてそうした立場にたっていきたいと考えています」と決意を語った。

日本マイクロソフト株式会社 代表執行役 会長 樋口 泰行氏

そんな樋口氏の口から出たのもワークスタイル変革について。これについては国との連携による地方創生を受けた取り組みも実施しているのだという。「先ほど平野が触れたテレワークウィークでは、ある実証実験をおこないました」と樋口氏。

北海道の別海町にある廃校をオフィスに作り替え、実際にマイクロソフトの社員、家族を含めてそこで働いてみたのだという。

「このような取り組みをすると、地域のみなさんも何が起こっているか興味が沸いてきますし、雇用機会も高まります」(樋口氏)

実験を繰り返し継続することで、実際の地方創生に役立てられるだけでなく、労働力の確保と競争力の強化が両立できる社会が生まれることを期待したい。

日本法人としての取り組みについて語る樋口氏

また、年金機構による情報漏えいなど、注目が集まるセキュリティ対策については「まもなく始まるマイナンバー制度や、BYODによるデバイス管理など、管理面で難しさやリスクが高まる背景が揃っています。だからといって使わせないというのはダメで、安全性を担保しながらきっちり使っていくのが基本です」と樋口氏。

マイクロソフトといえば、ペンタゴンに次ぐサイバーアタックの標的であることは有名だ。最先端の攻撃を防ぎ続けているノウハウがある同社ならではの高度なセキュリティ対策がフィードバックされればこれほど心強いことはない。

「セキュリティのリスクアセスメント、環境改善、問題検知などの各フェーズで支援サービスが提供できます。攻撃パターンを分析して検知対応する。オリンピックが近づけば、サイバーアタックは増えてくることが予想できるので、こうした支援は必ず必要になると思います」(樋口氏)

「マイクロソフトは地方創生、サイバー対策をはじめとした国のアジェンダに連携する形で、ICTで貢献できる部分において活動を続けていく所存です」とプレゼンテーションを締めくくった樋口氏。

基調講演終盤にはWindows 10のデモンストレーションも行われた。なお、FEST2015は9月8日の広島をはじめ、10月6日の大阪まで、全国6都市でも開催を予定している。マイクロソフトの"現在"と"ビジョン"がよく分かるイベントなので、興味のある方は参加してみるとよいだろう。

日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 エバンジェリスト 西脇資哲氏による、Windows10とマルチデバイスによるデモもおこなわれた