トレンドマイクロは9月2日、日本における不正広告による被害に関する調査を報告した。これによると、Web経由の攻撃ではエクスプロイトキットを設置した脆弱性攻撃サイトへの誘導が主要な攻撃手法となっているという。攻撃者は、利用者が攻撃サイトにリダイレクトする仕掛けを改竄サイトなどに設置し、利用者が気づかないうちに誘導を行っている。
日本国内でも、オンライン銀行詐欺ツールやランサムウェアなど多くの不正プログラム被害が確認されており、こうした脆弱性攻撃サイトへの誘導経路のうち、34%が不正広告だという。
不正広告の攻撃には大きく分けて2種類ある。1つは正規の広告が侵害され不正コンテンツが含まれてしまう場合、もう1つは攻撃者自らが広告料を払い不正コンテンツを含んだ広告を出稿する場合だ。いずれにせよ、インターネット利用者が Webサイト上で目にする広告が脅威への誘導経路となる。
今回のトレンドマイクロの調査では、海外の4つのホスティング業者が管理する6つのドメインにホストされた複数の広告コンテンツが、脆弱性攻撃サイトへの誘導経路となっていたことを確認した。
一般の正規サイトの改竄では、攻撃の影響範囲は直接アクセスした訪問者のみだ。しかし、不正広告の場合アドネットワークなどのネット広告の仕組みに乗ることで、より多くの正規サイトへ不正広告が配信され、利用者に影響を与える可能性がある。
SPNの統計では、これらの不正広告をホストした7つのサーバに対し、7月1日~8月21日までの1カ月半で、日本から900万件以上のアクセスがあったことを確認している。
また、いずれのサーバも、日本からのアクセスが全体の5割から8割を占め、日本をターゲットにしていたことがわかる。不正広告が配信されたと推測される正規サイトには、アダルトサイトやまとめサイトなどに加えて、各種メディアのサイトや、動画やポイントなどの各種Webサービス、オンラインゲーム、ソフトウェアベンダーなど、一部著名な日本向けの正規サイトが含まれていた。
不正広告が表示される広告枠は、アクセスした利用者の属性を反映して表示される場合が多いので、不正広告の存在を調査しにくい。また攻撃自体が短期間で移動していくので、調査が進められない場合も多い。さらに不正広告から誘導される先の脆弱性攻撃サイトも、同一のIPから複数回アクセスがあった場合は脆弱性攻撃を発動しないなどの仕掛けがあり、調査はより困難になるという。
攻撃者にとって有利な誘導手段である不正広告は今後も増加が予測される。今回の調査で最終的に侵入する不正プログラムが確定できたケースの41%は「ZBOT」などのオンライン銀行詐欺ツールだった。また。26%は「CRYPWALL」などの暗号化型ランサムウェアだ。この状況から、不正広告においても攻撃者の最終的な狙いは金銭だと言える。
これらの脆弱性攻撃サイトによる被害を回避するには、 Internet ExplorerIE)、Java、Adobe Flash、Adobe Reader、SilverlightやActive Xなどで脆弱性が発見された場合、すぐに最新バージョンにアップデートすることが重要だという。