国立がん研究センター(国立がん研)は9月2日、多目的コホート(JPHC)研究から10年間で胃がんに罹患する確率について予測モデルを作成したと発表した。

同研究では、研究開始時(1993年)に血液を提供してもらった約1万9000名を、2009年まで追跡調査を実施。同予測モデルはその結果を元に作成されたもので、具体的には胃がんのリスク因子としてよく知られるヘリコバクター・ピロリ(H.p.)の感染の有無と萎縮性胃炎(AG)の有無についてそれぞれ血液の測定値から判定し組み合わせた「ABC分類(A群からD群に分けられ、H.p.とAGなしがA、H.p.有りでAGなしがB、H.p.なしでAG有りがC、両方有りがDとなっている)」や、H.p.感染以外のリスク要因として知られる喫煙や高塩分食品、胃がんの家族歴などを基に構築されたもの。

この結果、男性の10年間で胃がんに罹患する確率は0.04%(40歳、ABC分類:A群、他のリスク因子すべて無し)から14.87%(70歳、ABC分類:D群、他のリスク因子すべて有り)と計算されたほか、女性での同様の確率は0.03%(40歳、A群、他のリスク因子すべて無し)から4.91%(70歳、D群、他のリスク因子すべて有り)の範囲であり、ABC分類のBCD群ではA群に比べて胃がんのリスクが高いこと、ならびに B群からD群までは、その他のリスクの有無により胃がんリスクに幅がみられましたが、 A群では、その他のリスクの有無に関わらず、一貫して胃がんリスクが低いことが示されたという。

この結果を受けて研究グループでは、BCD群の場合は生活習慣の見直しや必要な検診を受けるなどの望ましい予防行動や保健行動をこころがける必要があると言えるとコメントしている。また、モデルの精度について、今回の研究の中では確認済みではあるとしているものの、独立した別の研究における検討は行われていないことから、その妥当性の確認と実用化が今後望まれるともコメントしている。

男性の場合の10年間の胃がん罹患確率

女性の場合の10年間の胃がん罹患確率