放射線医学総合研究所(放医研)は8月28日、東京電力福島第一原子力発電所近くの期間困難区域の放射線量が特に高い地域に自生するモミの木において、放射線量が低い地域のものと比べ、主幹が欠損した二股様の形態変化を示す個体の頻度が増加していると発表した。
同成果は、環境省が実施した野生動植物への放射線影響を把握するための調査のうち、モミに関する結果について、放医研がデータのとりまとめを行ったもので、8月28日に英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
今回の調査では、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響を強く受けた、帰還困難区域内の放射線量が特に高い地域に自生するモミ個体群を調査した結果を解析。その結果、放射線量が低い地域の個体群と比べて、形態変化の発生頻度の顕著な増加が認められた。また、放射線量に依存してその頻度が高くなっていることがわかった。
この形態変化では、木の主幹の欠損による二股様の分岐が特徴的に認められた。放医研は、主幹欠損は放射線以外の環境要因や物理的障害でも発生するため、必ずしも放射線に特異的な現象ではないが、モミを含む針葉樹は放射線感受性が高いことを踏まえると、今回の結果は、放射線が東京電力福島第一原子力発電所近くの地域におけるモミの形態変化の一因となっている可能性を示唆するものであるとしている。
今後、形態変化の発生と放射線被ばくとの因果関係を明らかにするためには、モミが受けた放射線被ばく線量を正確に見積もることや、実験施設内でモミに対して直接放射線を照射するなどして、同様の形態変化が発生するか調べる必要があるとしている。