ラクーンといえば、アパレルメーカーや雑貨メーカーと小売店を直接繋ぐ、卸・仕入れのECサイト「スーパーデリバリー」を運営する企業だ。45万点という従来の問屋を介したビジネスでは物理的に不可能なほど豊富な品揃えを誇り、多彩な商材を扱いながら決済が一本化できること、バイヤーの小売店は厳正な審査を経て会員登録することではじめて利用できるスタイルで信頼性を担保していることなどが魅力となり、4万社以上の小売店と1000社以上のメーカーが利用している。このラクーンを一代で築き、現在も社長をつとめるのが、小方功氏だ。
同氏は1993年に狛江市のアパートで創業し、2006年4月には 東京証券取引所マザーズに上場を果たしている。そして、8月25日には、「スーパーデリバリー」の海外版「SD export」をスタートする。
そんな小方功氏に、これまでの経緯と、ビジネスにおける成功のポイントを聞いた。
学生時代のベンチャー企業訪問ツアーで出合った「起業」という選択肢
同氏が「起業」を人生の選択肢に入れることになったきっかけは、大学時代に参加した米国のベンチャー企業を訪問するツアーでの体験だったという。
「当時はまだ独立することは考えていませんでしたが、たまたまツアーの募集を見ておもしろそうだと思って参加しました。社名は覚えていませんが、このツアーでは、2人の経営者に影響を受けました」と小方氏は語る。
当時の日本は成長著しく、途上国から先進国への仲間入りを果たした時期だが、一人目の経営者は、途上国と先進国の違いを意識しなさいと語ったという。
「途上国では、大工、漁師、公務員など知っている職業しかありませんが、先進国では文化が発展することで、ダンサー、脚本家、メークアップアーティストなど、従来とは違った職業が増えてきます。これが何を意味するかについてその人は、『人間にはもって生まれた個性があり、先進国では個性に合った職業に就くことができる。だから、あせらず、自分に合った職業を見つけなさい。それが天職になる。天職にめぐり合えば、待遇もよくなり、人からも尊敬される。自分の人生が誇れるようになる。これが大事だ』といいました」(小方氏)
そしてもう一人の経営者からは、「いろいろな会社を見なさい、その上で自分の個性を生かせる場所がなかったら選択肢を自分で1つ増やしなさい」と進言されたという。
「彼はニューヨーク証券取引場で特別に彼の会社だけが表示される様子を見せ、『これは私がやったことだ。君たちにも夢を託す』といったのです。その時、私もいつかやってやろうと思いました」と小方氏は若き日の決意を語った。