ここ最近のハッカソンブームに乗って、各地で趣向を凝らしたさまざまなハッカソンイベントが行われているが、今回取材したのは8月21日に江の島片瀬海岸東浜にて行われた海の家でのハッカソンだ。
太陽が照りつける白い砂浜と青い海を横目にアプリ開発……というと少し違和感を抱いてしまう読者もいるかもしれない。このハッカソン「kintone beachCamp」は、サイボウズが主催する開発者向けの勉強会「kintone devCamp」の番外編企画で、同社提供のビジネスアプリ作成プラットフォーム「kintone」のカスタマイズ経験者を対象とした実践形式の勉強会という位置づけとなっている。なぜ今回、海の家で開催することとなったのだろうか。
実は、会場となった海の家「SkyDream Shonan Beach Lounge」は、ほかの海の家とは一線を画したものになっている。同店を運営するのは、飲食店向けクラウド型ソリューションなどを提供するIT企業、セカンドファクトリーだ。同店では、食事のオーダーや、会計、仕入れの管理などにおいて、同社のソリューションを活用している。実際の店舗での業務や経営体験を自社のシステム開発に生かすため、アルバイトの従業員とともに同社の社員が交代で働いているという。
店内には、BIツールと連携させた売り上げランキングなどが表示されている |
スマートフォンでメニューを見ることができる外国人観光客向けのサービス |
売り上げをスマホから確認できる |
店内の混雑状況をリアルタイムで可視化 |
セカンドファクトリー 代表取締役の大関興治氏は同店について、「ショールームとしての位置づけと、社員教育の一環という2つの目的があります。ITで海の家をやりますとか、唐揚げを売りますという意識でやっているのではなく、お客様の夏の思い出づくりのお手伝いをするというのがコンセプト」と説明する。
「クラウドをつかって効率化できた分を、産地直送の食材を使うなどサービスレベルの向上にまわすという発想です。海の家には食べもののおいしさを期待していない人が多いですが、単純においしいものを出せばお客さんが来てくれるようになるんです」(大関氏)
とはいえ、まだまだ課題もある。たとえば、同店で利用されている「極鶏売上仕入計算」というkintoneで開発されたアプリは、売り上げ目標金額を設定することで「ラーメンは何玉、ポテトは何Kg……」といったように、指定日に必要な食材とその量を割り出すことができるものだが、売り上げの目標金額はスタッフが勘を頼りに手動で入力しなければならないなど、管理が属人化されてしまっているという。
そこで今回のハッカソンでは、この「極鶏売上仕入計算」アプリの機能改善を図るべく、kintoneアプリのカスタマイズ経験豊富な参加者たちが1~2名ずつのチームに分かれ、それぞれ店のスタッフにヒアリングしながら開発を行うこととなった。
いくつかのチームは、天気や気温によって店の売り上げが大きく左右されることに着目。指定日の天気予報を手動で入力し、それを売り上げ目標に反映させる機能を追加したチームが多かったが、あるチームは、他サービスの外部APIから取得した天気予報のデータをもとに食材の発注量を決定できる機能を開発し、ほかの参加者たちから好評を得ていた。
また、食材によっては一度に発注しなければならなかったり、発注できる曜日が限られていたりするという状況を店のスタッフから聞き出したチームは、発注する曜日と発注量を食材ごとに設定できる機能を作成。ほかにも、食材の在庫量を「たくさんある」「少し」などといったように“ざっくり”指定できる海の家ならではの機能を開発したチームもあるなど、参加チーム皆が同じアプリをテンプレートに開発を行ったものの、それぞれが特徴のある成果物となっていたのが印象的であった。
ハッカソンの参加者は、「短時間で要件定義から設計まで行うのは大変でしたが、皆が同じテンプレートで開発していくので、ほかのチームの作品と比較することができとても勉強になりました。kintoneの新しい機能を使って開発している方もいて、自分も勉強して追いついていかなければ」と、充実した時間を過ごしたようだった。