ソフトバンクや日本マイクロソフトなど6社は8月25日、慶應義塾と協力し、Microsoft Azure Machine Learning(機械学習)を活用した診療支援技術研究開発プロジェクトの研究開発事業を開始すると発表した。研究開発期間は2015年10月から2019年3月まで。

同事業は日本医療研究開発機構の医療機器・システム研究開発事業「ICTを活用した診療支援技術研究開発プロジェクト」における2015年度の委託先として採択されたもので、ソフトバンク、日本マイクロソフト、UBIC MEDICAL、アドバンスト・メディア、システムフレンド、セムコ・テクノが参画する。

現在、精神科領域における患者症状の重症度評価は、患者の自覚症状や評価者の観察に基づいており、客観性に乏しい重症度評価が、日常臨床での治療導入の決定や治療効果判定、新薬開発のための治験の大きな障壁となる場合がある。

同研究では、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室 岸本泰士郎専任講師の研究チームが行ってきた、表情・瞬目モニタリングによる客観的うつ病・躁うつ病症状の評価研究を発展させ、診療時における表情・音声・体動などのデータをデバイス内で一次解析し、クラウドに転送、重症度評価のアルゴリズムと突合して症状を客観的に評価し、リアルタイムで診察室に結果を提示する診療支援デバイスを開発する。また、スマートフォンなどをプラットフォームとして過去数週間の生活活動データをクラウドで入手し診察室でのデータと融合することで、解析を補完するという。

さらに、Microsoft Azure Machine Learningを用いて、得られたデータと各疾患の評価尺度との相関が高くなる最適なアルゴリズムを探索、構築する。これにより、従来定量化できなかった患者の思考、表情、発言内容を可視化し、臨床評価や治療に活用することを目指す。

同デバイスを活用した診療支援システムのイメージ図

同デバイスの開発により客観的評価尺度が利用できるようになれば、臨床家の経験や感覚に頼っていた重症度や治療効果の判断が客観性をもったものになり、治療選択が科学的根拠に基づくものとなるほか、客観的指標の普及によって治療実績の評価・比較が容易になる。さらに、バイアスの大きい評価に依存しなくてもよくなり、治験の失敗を防ぐことにつながるとしている。