トレンドマイクロは8月20日、日本国内および海外のセキュリティ動向を分析した報告書「2015年第2四半期セキュリティラウンドアップ:標的型メールによる『気づけない攻撃』が多数発覚」を公開した。
2015年第2四半期は、国内の企業・組織が相次いで標的型サイバー攻撃の被害を公表。「気づけない攻撃」である標的型サイバー攻撃の被害が多数発覚しており、公表された15件の事例のうち12件が標的型メールにより組織内部に侵入されている。
1月~6月に報告された事例のうち、標的型サイバー攻撃で使用されることの多い遠隔操作ツール「EMDIVI(エムディビ)」と「PLUG X(プラグエックス)」が使用された19件の標的型メールの事例詳細を分析した結果、19件のうち79%が、メールの送信者情報を実在する国内組織に偽装していることが分かった。
また、パスワード付の圧縮ファイルを添付していた事例は全体の4分の1(5件)を占めた。パスワード付の圧縮ファイルを送り、2通目のメールでパスワードを別送するといったビジネスマナーで通常行われる方式でメールを送り、受信者の信頼を得る狙いがあるという考えを示している。
標的型メールは、一見しただけでは不審と気づかない偽装工作が複数施されているため、受信者側の「不審なメールに注意する」という心がけでは不十分。「不審と気づけない標的型メール」に対して、サンドボックスなどの技術で添付ファイルを解析する標的型メール対策や、「気づけない攻撃」を侵入後に早期発見できる対策の導入・体制整備が急務となっている。
2015年第2四半期は、脆弱性攻撃ツールであるエクスプロイトキットが設置された不正サイトへの全世界からのアクセス数が前期比で67%増加。総アクセス数のうち、日本からのアクセス数は49%を占めており、多数の日本のユーザがOS・アプリケーションの脆弱性に対する攻撃にさらされていることが判明した。
また、2015年第2四半期に報告された5件のAdobe Flash Playerの脆弱性のうち4件が、報告後8日以内にエクスプロイトキットに悪用されていた。このことから、エクスプロイトキットの開発者は、利用者の多いOS・アプリケーションの脆弱性情報を常に収集し、発覚後早期に悪用しようとしていることが読み取ることができる。
利用中のOSやアプリケーションの修正プログラムを可能な限り迅速に適用するとともに、不正なサイトへのアクセスや脆弱性を狙う攻撃そのものをブロックする製品の導入を推奨している。
ほかに、インターネットバンキング利用者を狙う「オンライン銀行詐欺ツール」の国内検出台数が前期比約48%減少(2015年1月~3月:約8,300件→2015年4月~6月:約4,300件)した。これは、国内の金融業界やセキュリティ業界のオンライン銀行詐欺ツールへの取り組みが効果をもたらしていることが言える。
一方で、金融サービス事業者に偽装したフィッシング詐欺サイトへの国内からのアクセス数は前期比で約4.5倍(2015年1月~3月:2,090件→2015年4月~6月:9,335件)に増加しており、国内の金融サービスの利用者を狙ったサイバー犯罪自体は、手法を変えつつも、いまだ活発化しており注意が必要となる。