アルコールやドラッグの中毒……ヘビーな話題ではあるが、人間は軽微なものを含め、中毒症状というものにまったく縁がないわけではない。問題解決好きなテクノロジーのプロは、ITで中毒からの脱出を支援しようと取り組んでいる。The Next Webの記事「テクノロジーが中毒問題を解決できるか?(原題:Can tech help overcome addiction?)」に、その具体例が紹介されている。

コラムニストのJohann Hari氏はTED Talkで、中毒の大きな要因として「孤独」を挙げた。

「人や社会とつながっていたい」という欲求は人間の自然な状態で、ここがうまくいかないとギャンブルやドラッグなどにつながりを見い出そうとする、というのがHari氏の論だ。

それに基づくと、「ソーシャル」は解決の鍵を握ると言える。実際に、中毒に取り組む多数のアプリが誕生している。その1つが「Sober Grid」だ。

端末のGPSを使って近くにいるアルコールの入っていないシラフ(sober)な人を探すことができる。アルコールを断つという共通の課題を抱える人がお互いに助け、励まし合うことで誘惑に負けないようにするという自助と相互支援を促進するアプリだ。最近ローンチしたばかりだが、すでに2万8000回のダウンロードがあったという。

一方でソーシャルに加えゲームの要素を取り入れたのは、「QuitNow!」だ。健康に関する情報提供、コミュニティ、ユーザーが自分のこれまでの成果を追跡できる機能などがある。

例えば、追跡できるものとして、最後に喫煙した日、禁煙が続いている期間と節約できたタバコ代などがあり、数値をソーシャルネットワークで共有できる。累計のダウンロード数は250万に達している人気アプリだ。

非営利団体のThe Hazelden Betty Ford Foundationもいくつかのアプリを公開している。アルコール中毒を脱却したい人向けのアプリ(大人向けの「Field Guide to Life」、若者向け「My Sober Life」)は、毎日メッセージを送り、ユーザーの感情とストレス管理を支援する。

スマートウォッチ向け(「Android Watch」)アプリ「Stop Smoking! for Wear」も登場している。Androidスマートフォンと連携し、禁煙に成功した時間やそれにより節約できた金額をスマートウォッチでチェックできる。

これらのアプリに加えて注目したいのが、VR(仮想現実)だ。ヘッドマウント型のディスプレーは、よりハイパー・リアリスティックな世界に没入できる。

この特性を治療に役立てようと、VRヘッドセットを装着したアルコールやドラッグ中毒者がついドラッグやお酒に手を伸ばしたくなるような状況(仮想)に身を置き、療法士が経過を見るという。なんと、匂いまで再現するのだそう。

Hari氏によると、中毒からの脱却には「一人じゃないよ、みんな君のことが好きだよ」というメッセージを発し続けることが大切とのこと。技術も、生身の人間の励ましの言葉にはかなわないということだろうか。