NTTデータ四国は7月31日、災害発生時に住民に対して緊急情報を確実に伝えるための「防災情報伝達システム」を高知県宿毛市から7月1日に受託し、開発に着手したと発表した。同社は2016年4月の正式稼動開始に向けて取り組むと共に、同システムの四国における他自治体での採用を目指す。

「防災情報伝達システム」は、自治体が一度の操作で、かつさまざまな伝達手段により、緊急防災情報等を住民に一斉に伝達することを可能とするシステム。

防災情報伝達システムの伝達手段

これまで災害時の情報伝達手段としては防災行政無線が主な手段として導入されてきたが、激しい雨や雷が屋外スピーカーからの避難の呼びかけを掻き消し、住民に勧告が届かなかったなどの課題が明らかになっているという。また、携帯電話やスマートフォン、タブレットなど情報端末の進化・普及に伴い、これらを利用した新しい伝送手段も求められているとのこと。

このような背景のもとで宿毛市は、現在稼動中の防災行政無線設備の老朽化によるデジタル化への移行時期を迎えていたが、アナログ式の防災無線が未整備のエリアへの対応を含め、デジタル防災行政無線で整備すると高コストになってしまう課題があったという。

同市はこれらの課題を解決するため、新たな住民の安心・安全を支えるインフラとして「防災情報伝達システム」を構築することにし、そのシステムとしてNTTデータ四国が提案した、NTTデータの「減災コミュニケーションシステム」を利用するシステムを採用、構築を開始した。

同システムは、伝達手段の多様化・冗長化に対応する。

具体的には、住民向けの情報発信と同時に消防団の召集にも利用できるよう、従来の屋外スピーカーからの拡声放送に加え、住民所有のスマートフォンや携帯電話などの端末、その他受信装置と連携し、多様な手段により一括して情報を伝達する。個人への情報伝達は、住民が所有するスマートフォンに専用アプリ(goo防災アプリ)をダウンロードして利用することで、防災情報などの受信端末として機能する。

従来、防災行政無線を利用するには、自治体は自営で送信局・中継局・無線設備を構築・運用する必要があった。同システムでは、屋外子局への通信に既存のインフラである携帯電話網を活用することで、新たな通信網を構築する必要が無く短期間でのシステム構築および低コスト化を実現するという。

また、回線逼迫時にも輻輳が起こりにくい通信網を利用することで、万一の災害時にも遅延の無い確実な情報伝達を実現するとしている。

さらに双方向通信により、庁舎から装置の動作状態や伝達状況の遠隔監視を実現するという。

減災コミュニケーション・システム整備のイメージ

同社は同システムに関して、防災情報伝達に限らず、被災後の避難所開設から復旧支援など、多様な情報の収集機能の強化・補完を図れるシステムへの発展を目指す。