2015年の3月に北陸新幹線が開業したと思ったら、2016年の3月には北海道新幹線の開業が控えている。この北海道新幹線は、従来の新幹線にはない特徴をたくさん備えている。最大の特徴と言えるのが、青函トンネルにおける新幹線と在来線の施設共用である。
青函トンネルは新在共用
もともと青函トンネルは新幹線を通す前提で造られているので、トンネルの断面や勾配は新幹線に合わせた仕様になっている。それだけでなく、レールを取り付ける軌道スラブも、在来線(軌間1067mm)用のレール締結装置だけでなく、新幹線(軌間1435mm)用のレール締結装置を取り付けるためのボルト穴が最初から用意してあった。
ただし、新幹線と在来線で別々にレールを設置するには軌間の差が少ないので、いわゆる「三線軌」になる。新在の両方が共用するレール(Cレール)と、在来線だけが使用するレール(Nレール)、新幹線だけが使用するレール(Sレール)から構成されているのだ。Cレールは以前から使っているものだったため、Sレールを新設するとともに、Cレールも新しいものに交換した。
三線軌だから、新幹線電車が通る時と在来線車両が通る時では、車両の中心線の位置がずれる。そのため、新幹線を通すための工事に際しては、Sレールを追加するだけでは済まず、頭上の架線も位置をSレール側に92mmずらした。在来線と新幹線のうち、どちらか一方に合わせると「あちら立てればこちらが立たず」になるので、間を取った位置にする必要がある。
ちなみに、三線軌は秋田新幹線を構成する奥羽本線の一部区間(神宮寺~峰吉川間)でも使われている。元が在来線だから踏切もあり、三線軌を間近に眺めることができる。
貨物列車の待避や異常時の備え
整備新幹線の最高速度は時速260kmである。しかし、すでに報じられているように、青函トンネル内では差し当たり、時速140kmに抑えて走ることになった。新幹線と、在来線の主役である貨物列車がすれ違う際の安全性が問題になったためだ。
どういうことかというと、すれ違った際に対向列車が風圧を受けるが、それによって貨車に積んでいるコンテナが荷崩れするようなことになるとまずい、という話である。このほか、列車がトンネル内に進入した時などに発生する気圧変動が対向列車にどう影響するか、という問題も考えられる。
そんなこんなで新幹線の最高速度が抑えられてしまうのだが、それでも新幹線の速度は時速140km、貨物列車の速度は時速100kmと大差がある。共用区間は82kmほどあるが、それを通過するのにかかる時間は時速140kmなら35分、時速100kmなら49分の計算になる。
そこで、貨物列車が新幹線の頭を押さえるような事態を避けるため、青函トンネルの前後に待避施設を設けることになった。奥津軽いまべつ駅が本州側の待避施設になり、新幹線の両脇に分岐する形で、在来専用の待避線を2本ずつ設ける。狭軌の線路を外側に出してしまうので、駅部は三線軌にはならない。
対する北海道側の待避施設は湯の里知内信号場(もともと知内駅があった場所)で、こちらは本線を三線軌にしたまま、さらに狭軌の待避線を両脇に分岐させる。こちらも上下それぞれ2本ずつの待避線を設ける。
こうすると、青函トンネルに入る手前、あるいは青函トンネルを出た先で先行する貨物列車に追いついてしまっても、そこで追い越せる。また、輸送障害が発生して青函トンネルへの進入が抑止された時に、ここで列車を止めて待たせることもできる。
ただし、上りの新幹線が青函トンネルへの進入を抑止された時は、湯の里知内信号場ではなく、手前の木古内駅で待たせることになるだろう。だから木古内は上り線に、奥津軽いまべつは下り線に、新幹線用の副本線がある。