日本年金機構による個人情報流出事件が連日報道されていたが、サイバー攻撃による被害は堪えることがない。われわれはどうしたら、自分の端末や個人情報を守ることができるのだろうか。今回、ウェブルートのマーケティング最高責任者のデイヴィッド・ダンカン氏に、サイバー攻撃が高度化する今日に有効なセキュリティ対策について話を聞いた。
従来のセキュリティ対策製品ではもう守りきれない
初めに、ダンカン氏は従来のオンプレミス型のセキュリティ対策製品では、新たな脅威に対応しきれないことを指摘した。
「例えば、シグネチャ・ベースのウイルス対策ソフトは、脆弱性が発見されてからシグネチャを作成して配布するため、エンドユーザーがシグネチャを入手できるまで時間がかかってしまいます。また、検出される脅威の数は増える一方であり、すべてのシグネチャをタイムリーに作成することは困難です」(ダンカン氏)
そのほか、ファイアウォールは「エクスプロイト攻撃を理解できない」といった短所を、攻撃シグネチャ・ベースでマルウェアを検出するIPSは「浅いアプリケーション分析」「高い誤検知率」といった短所を抱えているという。
昨今では、1日に2万5000個の不正なURL、6000個のフィッシングサイト、8万5000個の悪質なIP、79万の未知のファイル、12万個のマルウェアが検出されており、シグネチャ・ベースの製品では、この膨大な数の脅威に対抗しきれないというわけだ。
そこで、同社が効果がある対策として提案するのが、クラウドコンピューティングを活用したセキュリティ・サービスだ。
クラウドベースのデータ分析で未知の脅威のふるまいを予測
ダンカン氏は、クラウドを活用して未知の脅威に関する膨大なデータを解析して、脅威を予測することで防御すべきと語る。同氏は、クラウドベースのセキュリティ対策のメリットとして、「端末にインストールしないので、バッテリーの消耗が抑えられること」「脅威に関する情報をクラウドに接続している端末で共有できること」「ネットワークさえつながれば、どこにいても保護されること」を挙げる。
ダンカン氏によると、不正なURL、IP、ファイル、アプリは検出されることを逃れるため、常に変化しているそうだ。そこで、同社はクラウド上で独自の機械学習エンジンを利用してPCのふるまいを記録・分析しているという。これにより、脅威のルールを見出して見えない脅威を予測し、対策を講じているというわけだ。
実のところ、"クラウドベース"のセキュリティ対策製品を提供しているベンダーはウェブルートだけではない。ダンカン氏に、同社が提供するクラウドベースのセキュリティ・サービス「BrightCloud Security Services」は、競合のサービスとどう違うのかを聞いてみた。
まず、「BrightCloud」は数百万のOEMパートナーのネットワークとエンドポイントからデータを収集しているため、分析対象のデータが膨大な量となっている。さらに、BrightCloudでは、エンドポイントからのデータは30秒ごとに収集しており、URLは200億個、IPは40億個、ファイルは70億個検出して、分析を行っている」(ダンカン氏)という。
同社のパートナーには、ヒューレット・パッカード、パロアルト・ネットワークス、インテルなどの大手ベンダーが名を連ねており、各社の製品にBrightCloudが組み込まれている。
そして、収集したデータは、前述の機械学習エンジンによってふるまいが分析される。具体的には、「リスクが高いことがわかっているWebサイトにもかかわらず開いてしまう」といった人間のふるまいをベースに解析が行われているという。
そして、BrightCloudではふるまいを解析することで、これまで見たことがないIP、URL、ファイル、モバイルアプリについて、悪質なものであるかどうかを予測する。
ユーザーを邪魔せず効果をもたらすことが大切
さらに、ダンカン氏はセキュリティ対策製品として、重要な要素を説明してくれた。同氏は、セキュリティ対策製品は、ユーザーの邪魔にならないよう、かつ、ユーザーが見えないように動作することが大切だと話す。加えて、ユーザーの端末のパフォーマンスを阻害しないことも必須だ。これらを実現しながら、製品の効果を上げるには、リアルタイムで処理することが求められているという。
その点、BrightCloud Security Servicesは、クライアントにインストールするエージェントは1MBにも満たないため、負担がかからない。
また、ユーザーに対しては、データが改竄されるなどのセキュリティ侵害を受ける可能性があることを認識したうえで、被害を受けた時に迅速に対処できるようなソリューションを持っているべきとアドバイスする。
インターネットを利用するなら、未知の脅威との遭遇を常に想定しておかなければならない現在、自分の端末や情報を守るには、脅威を予測して手を打つことが必須なのかもしれない。