JTB商事は2015年、主力事業となるギフト事業の中核を担うECサイトをリニューアルした。これにより、業務の大幅な効率化に成功したという。同サイトのリニューアルについて、同社の取締役 植野茂樹氏と主幹 渡邉聰氏に話を聞いた。
(左)JTB商事 主幹 渡邉聰氏 (右)JTB商事 取締役 植野茂樹氏 |
2000年から開始したWeb販売事業が急速に伸長
JTB商事は、日本最大規模の旅行代理店「JTB」のグループ企業。1971年に創業して以来、旅館・ホテル事業やギフト事業、旅行用品事業などを中心に展開する。
ギフト事業の中核を担うのは、お土産品のカタログ販売。旅行者が旅行に出掛ける前に注文しておけば、帰宅する日に合わせて自宅に商品を届けてくれるというサービスだ。旅行者にとっては、お土産品を気にせず旅行を満喫できるほか、帰りの荷物が重くならないというメリットがある。そのため、旅行者からの評価は高く、毎年20万人以上が利用しているという。
本来は旅行先で購入するおみやげ品を、旅行出発前にカタログで注文し、帰国日に合わせて自宅へ届ける海外おみやげの事前予約宅配システム。これまでは、海外版を「らくらく帰国」、国内版を「らくらく道中」という名称で展開していたが、これら2つを統合し「ワールドショッピングプラザ」とした |
「お土産品のカタログ販売では、国内外の観光地をほぼ網羅しています。商品ラインアップも幅広く、現地で購入できるお土産品の多くを、カタログ販売で購入できます。また、『お土産を買い忘れた』や『数が足りなくなった』というお客様の声に応え、帰宅後の申し込みにも対応しています」(植野氏)
これまで、同サービスを申し込む手段は電話やファクス、郵便だったが、それに加えて2000年以降、ECサイトでも受付できるように。「ECサイトでの当初の売り上げは、ギフト販売全体の10%に満たない状況でした。しかし、毎年数%ずつ伸長し、2014年には32%を占めるまでに成長しました。弊社の事業の中でも伸長率が高く、急速に伸びています」と植野氏は証言する。
顧客ニーズに応え、ECサイトを次々と構築。業務負荷の増大が課題に
急伸するWeb販売に対応するため、同社はWeb販売サイトの拡張を目指した。これまでは自社ECサイトのみだったが、個客との接点を増やすため、総合ショッピングモールなども利用したという。その結果、最終的には18ものECサイトを管理・運用することになった。
多くのECサイトを運用することで、当初の狙い通り、顧客ニーズをキャッチアップすることはできた。しかし、それと共に、個別に構築してきたECサイトの管理・運用業務の負担も増加し、これが新たな課題となった。一例を挙げると、商品の入荷情報や在庫の登録作業をする際、それぞれのシステムごとに作業をしなければならないため、担当者の負荷が増えてしまったという。
同社が運営するECサイトの1つ「旅Motto」は、旅行の準備に役立つ商品や、日常生活において旅気分を味わえるアイテムなど「旅」をキーワードにさまざまな商品を提供する |
「カタログの切り替え時期には、数千アイテムを登録しなければいけません。4人のスタッフだけでは手が足りず、外部スタッフも増やしました。結局、この作業だけでも2ヶ月以上はかかっていたと思います」と、主幹の渡邉氏は当時を振り返る。その結果、ECサイトの維持・管理に人手を取られてしまい、ギフト事業のメイン業務である商品開発などに手が回らなくなってしまった。まさに本末転倒である。
業務効率化と、新規需要の開拓も可能に
そこで同社は、ECサイトの管理・運用業務の効率化を図るべく、ECサイトの統合や基幹システムとの連動を模索した。SIerやベンダーからも数々の提案を受けたという。必要な要件をクリアし、投資効果が高いシステムを厳選した結果、オープンソースのECサイト構築パッケージ「エレコマ」と、在庫・受注・商品情報の一元管理を行う「モールコネクター」を使ったEC販売システムを構築することに決めた。
「モールコネクター」とは、楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazonなどショッピングモールの各APIと自社ECサイト・基幹システムをつなぎ、情報の受け渡しを行うサービス。提供・開発元はアピリッツとなる |
「エレコマ」と「モールコネクター」を使うメリットについて、渡邉氏は「1つの管理画面から複数のECサイトにアイテムを登録できるので、大幅な業務効率化になります。また、リアルタイムで在庫状況を各ECサイトに反映することも可能になります」と説明する。
ほかにもメリットはある。例えば、同社のECサイトを利用する数千社のパートナー企業にとっても利便性が高いという点だ。
「エレコマは、柔軟性と開発生産性が高い国産言語 Rubyを使っているため、B2CのみならずB2B2Cのようなビジネスへもカスタマイズで対応できます。これは、パートナー企業が多い弊社にとって非常に魅力的な提案でした」(植野氏)
基幹システムのリプレース時期を迎え、同社は基幹システムとECサイトの再構築を実施。この機会に、これまで自社運用してきたサーバーもクラウド化し、サーバーの管理工数を削減したという。ECサイトのリニューアルに関しては、「エレコマ」と「モールコネクター」に加え、サイト内検索ASPサービス「Advantage Search」を導入することにした。
「こういった工夫によって、業務効率は大幅に向上しました。まだ繁忙期を経験していませんが、現状の状況を鑑みて、おそらく2週間あればアイテムの登録は終わるはず」と渡邉氏。
また、ECサイト活性化対策ツールの情報を分析することで、戦略を立てるのも容易になったという。「2015年4月には、カタログ掲載商品の販売を行う『ワールドショッピングプラザ』と国内・海外のさまざまなお土産や旅行用品の販売を行う『旅Motto』をオープンしました。7月からは伝統工芸品の販売も開始し、取り扱い商品の幅を拡大していきます。こうして商品開発に注力できるのも、業務効率アップの効果です」と、植野氏は相好を崩す。
ECサイトのリニューアルを機に、業務効率化を実現したほか、顧客ニーズに応えた施策を積極的に打てるようになったJTB商事。今後の展開に、ギフト業界も注目している。