6人の学生チームが、3kWの電力の範囲で動作する高性能のサーバクラスタを作り上げ、Top500のランキングにも使われるHPL(High Performance Linpack)と4つの科学技術計算アプリの実行性能を競う「Student Cluster Competition(SCC)」は人気が高く、11月のSCに併設して行われるもの、例年6月であるが、今年は7月開催となったISCに併設して行われるものと、Asia Supercomputer Communityが主催するアジアの大学チームが競うASCと年間3回開催されている。
いずれもルールは同じで、6人の学部学生(高校生も可。学部を卒業した大学院生は不可)と1人のアドバイザがチームとなり、サーバクラスタを作り、課題のベンチマークやアプリケーションプログラムの実行性能を競う。また、サーバクラスタのハード、ソフトを提供(貸与)し、競技に参加するチームメンバーの旅費や滞在費、そしてサーバハードの輸送費などを負担するスポンサーを見つける必要がある。
サーバクラスタは、供給電力が3kWを超えないという点だけがルールで決まっているだけで、スポンサーがOKしてくれれば、どんなハード、ソフトを使っても良い。
参加チーム
今回のISC 2015におけるSCCの参加は11チームで、ドイツ2チーム、中国3チームの他は、南アフリカ、スペイン、米国+コロンビア、ブラジル、インド、エストニアと多彩である。しかし、残念ながら日本からの参加はない。
競技に参加するには、チームメンバーやクラスタの設計などを記載した提案書を開催主体に提出し、それが審査されて競技に参加するチームが選ばれる。
今年のISC15のSCCの参加チームは、以下の11チームである。
- Centre for High Performance Computing(CHPC)
- Purdue University & EAFIT Universidad
- TU Chemnitz
- University of Science and Technology of China
- University of Sao Paulo
- University of Hamburg
- Jamia Millia Islamia University
- University of Tartu
- Universitat Politecnica de Catalunya(UPC)
- Tsinghua University
- National University of Defense Technology(NUDT)
CHPCは南アフリカのスパコンセンターのチームで、DellとMellanoxがスポンサーに付いている。Purdue & EAFIT Universidadは米国のパデュー大とコロンビアのEAFIT大の連合チームでHPとIntelがスポンサーとなっている。
TU Chemnitzは、ISCの地元のドイツのTechnische Universitat Chemnitzのチームで、Lenovo、CoolIT、MellanoxとNVIDIAがスポンサーとなっている。University of Science and Technology of Chinaは中国科学技術大学のチームで、Huaweiがスポンサーとなっている。
University of Sao Pauloはブラジルの大学チームで、一覧表にはスポンサーは書かれていないが、ブースには、ブラジルのVersatusという会社とMellanox、SGI、Intelのロゴが張られており、これらの企業がスポンサーになっていると思われる。University of Hamburgは地元ドイツの大学チームで、BULLとMellanoxがスポンサーである。
Jamia Millia Islamia Universityはインドのニューデリーの大学のチームである。米国のサーバメーカーのBoston、ロシアのRSC-Tech、SyncThreads Computingというインドの企業がスポンサーについている。University of Tartuはエストニアの大学である。ここは一覧表にスポンサー名がなく、ブースにロゴも張られていない。しかし、ブースの写真に写っている男性の青いシャツの背中にMellanoxのロゴとHorizonと書かれている。HorizonはEUのHorizon 2020プロジェクトのことであろうか。
カタルーニャ工科大学はスペインのチームで、EUのモンブランプロジェクト、バルセロナスーパーコンピューティングセンターなどの政府系の機関と、BULL、ARMといった企業がスポンサーになっている。精華大は中国の名門で、中国のサーバメーカーであるInspur(浪潮)がスポンサーになっている。
そして、中国のNational University of Defense Technology(国防科学技術大)はTop500の1位に輝く天河スパコンを開発した大学である。国防というと男性というイメージがあるが、チームは男女3名ずつで構成され、参加11チームの中で女性比率が一番高いチームであった。ここもInspurがスポンサーになっている。
Student Cluster Competitionの競技
競技の配点は、Top500で用いられるHPLのスコアが10%、3つの課題アプリとサプライズアプリが1つあり、これらの合計が80%、残る10%はISC展示会場に設けられた各チームのブースを訪れたエキスパートの投票できまるFan Favoriteである。
今年の課題となったのは分子動力学計算のアプリである「LAMMPS」、Pythonで書かれた移流拡散問題を解く「PyFR」、時間依存のDFT問題を解く「Octopus」の3つの科学技術計算アプリである。これらのプログラムを事前に勉強して競技に臨むが、競技の開始時に提示される入力データで動きが変わるので、事前に最高の性能が出る条件が分かるというわけではない。また、今年のミステリアプリとしては、制約条件を変えたPyFRが使われた。
なお、競技が開始されると、アドバイザが技術的なアドバイスをするのは禁止で、6人の学生だけで問題を解決して行かなければならない。
今年の結果
今年、総合優勝をしたのは中国の精華大学チームであった。そして、南アフリカのCHPCチームが総合2位、中国科学技術大学チームが総合3位となった。
最高LINPACK性能賞は、10.78TFlopsとISCでの新記録を達成したインドのJamia Millia Islamia大学のチームが獲得した。そして、Fan Favorite賞は、パデュー大とEAFIT大の連合チームが受賞した。