2015年6月のGoogle急上昇ランキングは、ニュースで度々報じられた「MERS」がトップに。先日決勝が行われた女子W杯は、予選から活躍を見せてくれた。

2015年6月のGoogle検索ワードの急上昇ランキング (データ提供 : Google)

検索量も減少、このまま終息してほしい「MERS」

1位の「MERS」は、韓国での感染拡大が報じられたMERSコロナウイルスのこと。2012年、英国で中東への渡航歴がある重症肺炎患者から新種のコロナウィルスが分離されたことがWHOへ報告され、のちに「Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus (MERSコロナウイルス)」と命名された。感染者は、サウジアラビアやUAE、イエメン、イラン、オマーン、カタールといった中東地域のほか、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、北米でも報告されている。

主な症状は、発熱やせき、息切れなどで、WHOに報告された症例のうち、悪化して死亡した割合は約40%とされる。MERSウィルスに効くワクチンがないため、治療は基本的に対症療法となる。高齢者や糖尿病・慢性肺疾患・免疫不全などの基礎疾患がある場合は重症化する傾向があるという。

時間の経過ごとに検索量の多い地域を青で表示。2015年5-6月には韓国が最も濃い青で示される



2015年5月、中東から韓国へ帰国した男性がMERSを発症たことを起点に同国内で感染が拡大。特に6月初旬には感染者が100名を超える事態となり、日本でも大きく報じられたことから検索量も急上昇したものと思われる。

日本では中東に加え、韓国からの入国・帰国者に対する検疫体制を強化。厚生労働省は、一般向け・医療従事者向けの解説・対策を示したQ&Aを公開している。

急激に増加した検索量も、同月後半には徐々に減少。韓国の中央MERS管理対策本部の発表によると、過去6日間連続で新しい患者が確認されていないという(7月11日時点)。まだ安心はできないが、終息局面に向かうことを願いたい。

ブームで終わらせず、次の「女子 ワールドカップ」へ

検索ランキングにて2位となった「女子 ワールドカップ」は、現実にも、なでしこジャパンの準優勝で幕を閉じた。女子ワールドカップは1991年に始まり、今回のカナダ大会で7回目だが、日本のGoogle検索上で盛り上がりを見せるようになったのは前回の2011年ドイツ大会から。東日本大震災後の非常時から数カ月、現実の厳しさに沈んでいた日本を、なでしこジャパン優勝のニュースが沸き立たせてくれた。

急上昇度のランキングには「女子 ワールドカップ」しか入っていなかったが、Googleトレンドでスポーツカテゴリの検索ボリュームを比べると、「なでしこ」の方が多く検索されていることが分かる。"女子代表"でなく"なでしこ"という愛称が広く受け入れられているようだ。男子も「サムライブルー」という名があるが、なんとなく気恥ずかしいし、野球の「侍ジャパン」とも混同しやすいからか、一般には「代表」や「A代表」と呼ばれることが多いようだ。

今年の「なでしこ」は昨年の「日本代表」を検索ボリュームで大きく上回った。「サムライ」は定着しないない模様

ワールドカップ開催のため中断していたなでしこリーグが7月12日に再開した。代表メンバーが所属チームに戻って全5試合が行われ、観客数はワールドカップ前よりも大幅に増えたという。検索でニュースを見るばかりでなく、現場に行って応援することがこれからのなでしこを育てる力になるのだ。

マーケティングは現代の占いか?

7位の「ディグラム」は、一種の性格診断のようなもの。テレビ番組で取り上げられ、ネット上の診断プログラムが紹介されたことから急上昇したようだ。1950年代にアメリカの精神科医エリック・バーン氏が開発した簡易型精神分析「交流分析(TA:Transactional Analysis)」を応用して、弟子であるジョン・M・デュセイが「エゴグラム(egogram)(参考書 : エゴグラム―ひと目でわかる性格の自己診断)」という自己分析的なテストを考案した。

「ディグラム」はここからさらに、エゴグラムをベースにアンケート調査や実証実験の結果を統計処理し、客観的にフィードバックする科学的診断だと説明されている。心理学をベースに統計というマーケティング的手法を取り入れているので、占いを信じない人でも試してみる気になるのかもしれない。

少し回答を変えつつ3回試したところ「NOと言えない腹黒人間」「頑固なのに自覚ゼロ」と毎回違う結果が出たが、どれも当てはまる気がする

むしろ、これ自体がマーケティングの上にヒットを狙って開発された商材だと思ったら、開発者は学者ではなく「マーケティングリサーチのプロ」。多くのペルソナを持ち自分を見失いがちな現代人にとって、確からしい理由をもとに「あなたはこうです」と分析してもらうことは、承認欲求が満たされる行為ともいえるだろう。ペルソナと結び付けてプロモーションしたいさまざまな業界の企業にもタイアップコンテンツとして重宝されているようだ。