富士通は7月13日、同社の電子カルテシステムを開発言語、データベースを含むすべてのシステム構造を一新し、クラウドサービスへの移行も容易なWebアプリケーションベースの新電子カルテシステム「FUJITSU ヘルスケアソリューション HOPE LifeMark-HX(以下、「HOPE LifeMark-HX」)として、7月13日より販売を開始した。価格は4,325万円~で、2015年10月より出荷開が始される。
「HOPE LifeMark-HX」は、国内400施設以上の医療機関で利用されている同社の電子カルテシステム「FUJITSU ヘルスケアソリューションHOPE EGMAIN-GX」の機能を継承しつつ、ユーザビリティの向上と、 運用管理負荷の軽減、およびデータ利活用の促進を実現した製品。
新システムは、ヘルスケアICT基盤「Healthcare Information Suite」の実現を目指し、今後はクリニック向け電子カルテシステム、介護支援システム、健診システムへ領域を拡大。病院向け新電子カルテシステムを第一ステップとして提供する。
「HOPE LifeMark-HX」の特徴としては、使い勝手の向上、データ利活用、システム運用管理での革新、クラウドサービスへの展開の4つがあるという。
使い勝手の向上では、初期画面に、各利用者が利用する機能のウィジェット(機能ウィンドウ)を、利用シーンに合わせて使いやすいように自由に配置でき、本システムに持っている入院/外来のステータス情報をキーとして患者のカルテを開くと、再診、入院中などの状況に応じて必要となる機能が自動的に画面に起動するように設定できる。また、テキストマイニングやシングルサインオン機能も提供される。
データ利活用では、電子カルテだけでなく、同社が提供する医事会計システムや 各種部門システム、さらには他社製の各種部門システムなどのデータも本システムのデータウェアハウスに取り込める。
また、BIツールを標準装備し、システムに集約した院内のデータから、任意の条件でのデータ抽出や分析、グラフ化などが可能で、これらを利用したレポート作成機能も装備している。
運用管理では、各クライアント端末にアプリケーションをインストールして利用するクライアント・サーバ型から、端末に資源を要さないWeb型へ変更。また、仮想化技術を採用し、サーバ台数を抑えながらも、システム構成を完全に二系統している。
クラウドサービスへの展開では、2016年度下期より、バックアップや教育環境サービスを提供。他社システムとのクラウド間連携も図っていく。
富士通 公共・地域営業グループ VP 佐藤秀暢氏によれば、電子カルテシステムの導入は1999年から右肩上がりで増加しているが、病院全体の普及率は25%にとどまっており、このうち、2014年度の富士通のトップシェアの33%だという。
政府は、今年の6月に「日本再興戦略」を改訂し、地域医療情報連携ネットワークの全国各地への普及をはかり、400床以上の一般病院における電子カルテの普及率を2020年度に90%以上目指す方針を明らかにしたが、この目標について佐藤氏は、「現時点での400床以上の病院の電子カルテの普及率は約60%で、そのうち富士通が50%を占めている。もっと付加価値が活用できることを医療機関が認識すれば、90%以上という目標は、それほど高いものではない。また、小規模の医療機関をもつ病院グループに提供できれば、中小規模の電子カルテシステムの普及率を高めることができる」と語った。
その上で、「HOPE LifeMark-HX」の販売を目標を2018年度までに250本とし、2018年度のヘルスケアマーケットでの売上目標を2,000億円にするとした。
また、開発言語、データベースを含むすべてのシステム構造を一新した理由について、富士通 ヘルスケアシステム事業本部 医療ソリューション事業部 事業部長代理 中川昌彦氏は、「これまでは、C/S型を大きく変えることなく成長させてきたが、クラウドやデータ利活用を考えた場合、デーベースの構造やシステム構成に引きずられる部分があった。システムのブラッシュアップでもよかったが、クラウドやデータ利活用を進めるためには、ここで1回リニューアルすべきだろうと考えた。一番のきっかけは、ヒューマンブリッジで、全国の医療ネットワークというクラウドの世界に展開する必要があった」と説明した。