経済団体・保険者・自治体・医療関係団体など民間組織で構成される「日本健康会議」が7月10日に発足した。
「日本健康会議」は、少子高齢化が急速に進展する日本において、国民の健康寿命の延伸と、医療費適正化について、行政のみならず、民間組織が連携し実効的な活動を行うために組織されている。経済団体・保険者・自治体・医療関係団体など民間組織が連携し、厚生労働省・経済産業省の協力のもと、具体的な対応策を実現していくことを目的としている。
発足式では、主催の日本商工会議所 会頭 三村明夫氏から、同会発足の趣旨について次のように説明があった。
「人口減少、少子高齢化が進む日本において、今後は高齢者の労働参加率を上げていかなければならず、そのためには健康維持が欠かせない。企業は、従業員の健康管理を経営的な視点で考えなければいけない。健康経営は、医療の削減のみならず、生産性の向上や従業員の能力発揮につながるもので、コストと捉えずに経営戦略の一環として捉えてもらいたい」(三村氏)
同会は、2020年に向けた具体的な活動指針となる「健康なまち・職場づくり宣言 2020」を策定し、達成目標を設定した8つの宣言を行った。
- 宣言1:予防・健康づくりについて、一般住民を対象としたインセンティブを推進する自治体を800市町村以上とする。
- 宣言2:かかりつけ医等と連携して生活習慣病の重症化予防に取り組む自治体を800市町村、広域連合を24団体以上とする。その際、糖尿病対策推進協議会等の活用を図る。
- 宣言3:予防・健康づくりに向けて47都道府県の保険者協議会すべてが、地域と職域が連携した予防に関する活動を実施する。
- 宣言4:健保組合等保険者と連携して健康経営に取り組む企業を500社以上とする。
- 宣言5:協会けんぽ等保険者のサポートを得て健康宣言等に取り組む企業を1万社以上とする。
- 宣言6:加入者自身の健康・医療情報を本人に分かりやすく提供する保険者を原則100%とする。その際、情報通信技術(ICT)等の活用を図る。
- 宣言7:予防・健康づくりの企画・実施を提供する事業者の質・量の向上のため、認証・評価の仕組みの構築も視野に、保険者からの推薦等一定の基準を満たすヘルスケア事業者を100社以上とする。
- 宣言8:品質確保・安定供給を国に求めつつ、すべての保険者が後発医薬品の利用勧奨など、使用割合を高める取り組みを行う。
これら8つの宣言をKPIとし、目標を達成するために次のワーキンググループ(WG)を設置し、厚生労働省・経済産業省とも協力して具体的な推進方法を検討していくとしている。
- 1:ヘルスケアポイント等情報提供WG
- 2:重症化予防(国保・後期広域)WG
- 3:健康経営500社WG
- 4:中小1万社健康宣言WG
- 5:保険者データ管理・セキュリティWG
- 6:保険者向け委託事業者導入ガイドラインWG
- 7:保険者からのヘルスケア事業者情報の収集・分析WG
- 8:保険者における後発医薬品推進WG
- 9:ソーシャルキャピタル・生涯就労支援システムWG
東北大学大学院医学系研究科 教授 辻一郎氏は健康経営の重要性について、次のように説明した。
「生活習慣を変えるためには、個人の努力では行動変容しにくい。社会環境が個人の行動を規定し、健康行動を支える社会環境づくりが重要だ。職場も健康づくりを支える重要な環境である。また、2014年の経済産業省の調査では、健康経営に優れる企業(経済産業省調査の評価上位20%)の平均株価を見ると、TOPIXを上回って推移している。特に、銘柄に選定された22社の平均株価は、それをさらに上回る結果となった。この結果から、健康経営を行うと企業の業績向上や株価の向上が期待できる。今後はインセンティブの導入を検討しており、ポピュレーション戦略を加速させたい」(辻氏)
同式では、塩崎恭久厚生労働大臣も出席し、次のように述べた。
「日本は国民皆保険のもと、世界最高水準の保健医療制度を確立しているが、今後はさらにこの保健医療システムを進歩させ、予防や健康づくりを意識し、国民の健康寿命を延伸させることが重要。健康先進国を目指し、20年後には、人々の主体的な健康づくりを社会で確立している日本を目指したい」