ブラザー工業は7月13日、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)「AiRScouter」の新製品として、業務用モデル「WD-200A」と医療用モデル「WD-250A」を発売した。価格は両モデルともオープンで、3年で1万2000台の国内販売数を目標としている。
両モデルは独自の光学設計により、1280×720ピクセルの解像度を実現したほか、映し出す映像の奥行きを30cmから5mまで設定できる焦点距離調整機能を搭載し目の疲れを軽減している。また、HDMIを映像インターフェースとして搭載しているため、さまざまな機器に接続でき、対応機器であればアプリ開発など大掛かりな変更を加えずに接続することが可能となっている。さらに、装着感は同社が注力したポイントの1つで、自然な装着感を追求した独自ヘッドバンドと、ディスプレイの位置を自在に変更できるフレキシブルアームを採用した。
作業用モデルの「WD-200A」はいくつかの工場ですでに試験運用されており、同製品を一部のラインに導入したパナソニックの群馬・大泉工場では、作業効率が20%向上したという結果が得られている。また、従来の作業支援に加えて、建築業界に向けてドローンの操縦などへの応用も期待されるという。
一方、医療用の「WD-250A」は同社が2013年より進めてきた東京大学との共同研究で開発されたモデル。インターフェースにHDMIに加えて医療用映像機器などへの汎用性が高いビデオ端子を搭載したほか、映像の任意の部分を拡大できる「任意部分拡大モード」が搭載されるなど、医療現場に配慮した特長を備えている。
HMDを医療現場で使用するメリットについて、「WD-250A」の研究開発に携わった東京大学医学部付属病院22世紀医療センター腎疾患総合医療学講座血液浄化療法部の花房規男氏は「血液透析では、専用の血管に針を刺す必要がある。このとき、従来はエコーガイド下で血管と穿刺針を確認していたが、視線が実際に針を刺す場所と異なるなどの課題があった。これに対し、ヘッドマウントディスプレイを使うことで視線の位置ずれを最小限に抑えることができると考えた。」と語る。また、その中でも「WD-250A」を評価する点として「旧モデルから解像度は高かったが、今回のモデルではさらに解像度が上がった。また、眼鏡の上からでも使えたり、拡大機能など医療での使い勝手の良さもありがたい」とした。同氏はさらに、「医療の現場では血管への穿刺以外にも両手で処置を行うことが多いので、HMDは有効だと考えている」とコメントし、医療現場におけるHMDの有効性を強調した。