日本や欧米を含む世界31カ国において、男女格差が女性起業家の経済力を制限しているという。デルがドイツ・ベルリンで開催した国際年次イベント「デル女性起業家ネットワークサミット」において6月30日(ベルリン時間)に発表した「グローバル女性起業家リーダーズスコアカード」の結果による。

同スコアカードは同社がスポンサーとなっており、女性経営者の起業・事業拡大・雇用創出・業界構造の変革に関する課題と機会に焦点を当てた、同社によると初めての世界的な分析だという。リーダー・政策立案者・立法者に向けて、各国の状況の改善方法を提言すると共に、女性が設立した企業の成長を可能にするための診断ツールの提供を目的にしているとのこと。2015年の結果は、世界中の女性起業家の状況について包括的な見解を示し、ベスト・プラクティスを明示しているとしている。

なお、調査対象となった31カ国は以下の通り(50音順)。インド、ウガンダ、英国、エジプト、オーストラリア、ガーナ、カナダ、韓国、ジャマイカ、スウェーデン、スペイン、タイ、中国、チュニジア、チリ、ドイツ、トルコ、ナイジェリア、日本、パキスタン、パナマ、バングラデシュ、ブラジル、フランス、米国、ペルー、ポーランド、マレーシア、南アフリカ、メキシコ、ロシア。これら31カ国で、世界GDPの76%を含むとしている。

グローバル女性起業家リーダーズスコアカードの国別ランキング

調査対象31カ国のうち7割以上でスコアが50%を下回り、女性が経営するビジネスと男性が経営するビジネスの成長の差が世界的に大きいことを示しているとのこと。同スコアカードでは、ビジネス環境が全体的に良好であることと民間部門における女性の人材の流動性が起因して米国が1位であるものの、その総合スコアは71%にとどまっている。米国で女性が男性と同じ割合で成長志向のビジネスを開始すると仮定した場合、2年間で1,500万人の雇用が創出されると同社は予測する。なお、日本は全体の10位ながら、スコアは49%だった。

同スコアカードに関して同社は、公平なリソースの利用、成長資金およびイノベーション・エコシステムの利用、国により異なる具体的な長所と短所、リーダーの役割は依然として男性優位、重要な役割を担っているのは政府、起業家を阻む男女格差の各点を課題として挙げる。

教育やインターネット、銀行口座、中小企業研修プログラムなど基本的なリソースの利用では、依然として国によって大きな差があるという。英国では複数のカテゴリーにおいて男女格差がほとんど無い半面、このカテゴリーの最低スコアだったパキスタンでは女性のインターネット利用・銀行口座の所持率とも低い値だった。

ランキング上位の国はいずれもおおむね、安定したビジネス環境を提供しており、事業規制や汚職、市場独占が比較的少なく、研究開発投資、イノベーション・エコシステム、資本の利用可能性の各レベルにおいて高いスコアを取得しているという。

ビジネスを始めるスキルがありビジネスチャンスを見いだしている女性の割合では、ナイジェリアが最も高かったとのこと。しかし、同国のビジネス環境が整っていないことが成長の妨げになっているとしている。半面、日本は安定したビジネス環境が整っているが、ビジネスチャンスを見いだしている、またはそのスキルがあると感じている女性はごくわずかだと指摘する。

大手上場企業のCEOにおける女性の比率を見ると、中国、ブラジル、マレーシア、ナイジェリアの4カ国では5%にとどまり、6カ国では0%という結果だったという。女性が上級経営者の35%以上を占めているのは、ポーランド、ジャマイカ、ロシアの3カ国のみであり、またフランスは女性が取締役の30%を占める唯一の国だったという。

公共調達は発展途上国のGDPにおいて30~40%以上、先進国のGDPでは10~15%を占めているが、世界的に見ると、女性が経営するビジネスに与えられている公共調達契約は、推定で1%とのこと。今回の調査対象である31カ国のうち、性別および公共調達に関する方針によって成長志向の女性起業家を積極的に支援しているのは、米国と南アフリカの2カ国のみだった。

調査対象の全31カ国において、起業家の知人を持つ女性はほとんどいないという。これは、起業家の模範となる人物が周囲におらず、また起業家のコミュニティとのつながりが無いことを示しているとのこと。これは女性がビジネスを始める傾向に影響を及ぼしており、全31カ国の68%で女性は男性に比べて起業する機会が圧倒的に少ないと感じているが、それらの国のほぼすべてで、男女それぞれの起業能力は同等と考えているという。