慶應義塾大学は6月25日、脂質異常症の治療薬として使用されるスタチン製剤に卵巣がんの発生や進行を抑制する効果があることを確認したと発表した。
同成果は同大学医学部産婦人科学教室の小林佑介 特任助教と米Johns Hopkins大学医学部病理学教室のTian-Li Wang 准教授、Ie-Ming Shih 教授らの研究グループによるもので、6月24日付(現地時間)の米科学誌「Clinical Cancer Research」に掲載された。
スタチン製剤はコレステロールの合成を阻害することから脂質異常症の治療薬として用いられている。近年、同剤ががんの発生を抑える可能性が注目されているが、卵巣がんではその効果が証明されていなかった。
同研究では、卵巣がんが自然に発生するマウスにスタチン製剤を投与した。このマウスは通常、生後5週からがんが出現するが、スタチン製剤を投与したマウスではその発生や進展が抑えられていた。ヒトの卵巣がん細胞を移植したマウスでも同様に、スタチン製剤の投与によって腫瘍の発生や進行が抑えられることが確認された。また、腎機能や肝機能への影響は認められなかった。
さらに、ヒトの卵巣がん細胞にスタチン製剤を添加して培養すると、増殖が抑制されるとともに、細胞が膨化したり細胞内に空胞ができることから、アポトーシスやオートファジーといったプログラム細胞死が関与していることが示唆された。実際、同剤の投与により、アポトーシスやオートファジーに関与するタンパク質の発現が細胞レベルでも腫瘍レベルでも高くなっていたという。
同研究グループは「今後は本研究の結果をもとに、至適用量やその適応を十分に考慮した上で、ヒトの卵巣癌の発生や進行を実際に抑制しうるか検討が行われることを期待します。」とコメントしている。