ソフトバンクロボティクスが6月18日に一般販売を発表した"感情を持つロボット"のPepper。20日の販売開始後、1000台が1分で完売したが、7月1日から時給1500円で"アルバイト派遣"もスタートする。
これは、クラウドAIサービス開発を手がけるソフトバンクグループのcocoro SB(ココロエスビー)が提供するサービスで、ティッシュ配りや受付、販売といった簡単な特定業務を安価に時給制で借りられる、ロボットの"ホワイトプラン"ともいえるものだ。
Pepperを購入する場合、本体価格の19万8000円のほかに、ロボット手数料や月々の基本プラン、保守サービスなどの36カ月契約を行うと、総額で100万円強の費用がかかるだけに、「少し、このイベントの時だけPepperを使いたい」「Pepperがどんなものかわからないから、お試し感覚で使ってみたい」といったニーズに合わせた派遣サービスといえるだろう。
簡易的な派遣サービスであるために、利用できるシーンはこの秋に提供される法人向けサービス「Pepper for Biz」と比較して限られる。同サービスでは、各導入業界や企業に合わせてPepperのアプリケーションをカスタマイズできるものの、派遣という"雇用形態"であるために、個別の企業に深くカスタマイズされる可能性は低い。あくまでアルバイト派遣される時に、企業のロゴが胸のタブレットに表示されたり、音声で企業名を話してくれたりするだけのカスタマイズとなる。とはいえ、基本的には一般販売されるPepperと全く同じものであるため、"ちょっとウザい会話のやりとり"などは変わらずこなしてくれる。
現在、仮予約受付が行われているPepperのアルバイト派遣だが、7月中のレンタルは東京23区のみ。レンタル時間は「9時~14時」と「15時~20時」「9時~20時」の3パターンが用意されている。派遣台数は2台~10台。
さて、本題の"時給4500円"だが、Webサイトでは確かに「ロボットの時給 1500円」と記載されている。しかし、下に注意書きとして「Pepperの派遣は2台から」と書かれている。
多くのメディアや弊誌でも「Pepperが1500円でアルバイト派遣」と書かれているが、2台からという記述をそのままに受け取ると「最低でも3000円」となる。
また、ロボットの業務アシストとサポートのための技術要員がココロエスビーより1名同伴する。技術要員の時給についても1500円とされており、最低でも総額は「時給4500円」となるわけだ。ロボットの時給と技術要員の時給が同じ1500円というのは、少し考えさせられるが……。
これに加えて配送費用が別途実費でかかる。ソフトバンクロボティクスの事業推進本部 本部長を務める吉田 健一氏によると「Pepperを輸送する時は、かなり慎重に扱わなければならない。精巧な機械であるため、一般の家電よりも慎重に運ぶ必要がある」としており、運送業者についてもコストがかかってしまう。最低限でも数千円の運送料になるようだ。
この条件を元に、最低のアルバイトコストを計算してみよう。
- (Pepper 2台+技術要員の時給4500円)×9時~14時の5時間+運送料5000円=2万7500円
5時間借りて2万7500円というコストは、通常のアルバイトと比較してかなり高額だ。ただ、ティッシュ配りの例で言えば、Pepperを活用することで、普通の人間のティッシュ配りとは異なり、目を留めてくれる可能性がかなり高まる。そうした付加価値をどこまで企業がメリットと捉えるかで、このコスト総額が持つ意味合いは変わって見えるだろう。
先ほどの吉田氏は、このアルバイト派遣について「法人向けの『Pepper for Biz』が正社員雇用とするならば、アルバイト派遣はまさに短期の雇用で"派遣さん"という立ち位置。時間あたりのコストは確かに正社員と比較して高くなってしまうが、自分たちの会社のニーズにあっているのか理解していただくためのもの。もちろん、アルバイト雇用の後には正社員登用という形もあると思う」と語っており、あくまでお試し感覚のサービスとして使ってほしいという意図のようだ。
当初はソフトバンクと取引関係のある法人のみがアルバイト派遣を利用できるが、今後はその他法人や「個人商店などの方でも利用できるようにしたい」(吉田氏)としている。