クラウド型出張・経費管理サービスを提供するConcur Technologiesの日本法人であるコンカーは、新経済連盟に加入しており、現在e文書法の規制緩和に向けて取り組んでいる。

スマートフォンによる領収書の電子化実現に向けて、財務省では2016年度中のe文書法規制緩和の検討を進めており、同社では、今後日本企業でのクラウド型経費管理導入がさらに進むと考えている。

同社は6月19日に記者会見を行い、規制緩和に対応した同社の製品開発戦略の発表とともに、e文書法が規定する規制内容と緩和の方向性、現行法制度下での日本企業の対応状況などについて説明を行った。

当日はコンカー以外に、米Concur Technologiesや日本CFO協会、日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が登壇した。

領収書をのり付けしている場合ではない

技術進化やワークスタイルの変化といった環境変化、生産性改善のプレッシャーや規制緩和の流れに伴い、日本国内でも、スマートフォンで撮影した領収書画像を証憑として認める規制緩和の動きが激しくなってきた。

コンカー 代表取締役社長 三村真宗氏

コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏は日本国内が抱えている課題について、次のように説明した。

「日本ではこれまで経費管理に関して紙での運用が行われてきた。経理書類は7年間の保管義務があり、大きな企業では膨大な量の資料を保管することになっている。また、従業員は領収書を1枚ずつ紙にのり付けして経費精算を行うなど、非効率な作業時間が生まれている。海外各国では、すでにスマートフォンなどにより領収書を撮影し、それが正式な証憑として 認められている。日本のホワイトカラーの生産性は先進国の中では最低レベルとなっており、もはや経費精算のためにのり付けしている場合ではない」(三村氏)

規制緩和の背景

2015年10月施行に向けて、電子帳簿保存法の一部規制緩和が決定しており、同社では追加緩和としてスマートフォンの活用に向けて、働きがけているという。

今年の規制緩和では、これまで3万円未満の領収書のみが電子化の対象だった点が、金額に関わらず、電子化が可能となる。また、これまで電子化を行った担当者や承認者の電子署名を行う必要があったが、実施者が特定できるID、パスワードで代用が可能となる。しかし、依然領収書を電子化するデバイスは「仕様を満たした原稿台付スキャナ」が対象のままとなっている。これを解消するために、同社では追加緩和として「仕様を満たしたデジタルデバイスの利用」を可能にすることを目指している。

領収書電子化に向けた「電子帳簿保存法」規制緩和の推移

三村氏は、「スマートデバイスでの利用が可能となることによって、領収書の電子画像化を徹底することができる。これにより、企業は保管コストや確認作業にかかる人件費を削減でき、従業員は領収書保管の手間や、社外からの経費精算が可能になることから経費精算作業の手間を削減できる。また、税務調査の視点では、経費申請内容と領収書画像がセットになることによって、不正の発見や確認作業の効率化につながる。管理コストの削減、業務の省略化によって、日本全体で1兆円近くのコスト削減が見込める」と語った。

スマートデバイスの利用が解禁されることによるメリット

米Concur Technologies 上級副社長 Sanjay Almeida氏

規制緩和に向けた同社の対応ソリューションとして、米Concur Technologies 上級副社長のSanjay Almeida氏は、次のように説明した。

「法定要件を満たすタイムスタンプを、モバイルアプリで撮影された領収書イメージに対して、コンカーのシステム上で付与する。これにより、保管された領収書の情報を保存するだけでなく、検索もできるようになる。さらに、OCR(光学文字認識)によって、金額や日付、レストラン名、住所などの領収書の情報を読み取ることによって、経費情報の入力を省略化できる」(Almeida氏)

これらの機能は2016年のリリースを目指しているという。

規制緩和に向けたコンカーの対応ソリューション

調査結果からも望まれる、スマートデバイスによる領収書電子化対応

日本CFO協会の専務理事 事務局長 谷口宏氏とコンカーのテクノロジー本部 船越洋明氏からは、領収書の電子化と経費管理に関する調査報告が説明された。

日本CFO協会 専務理事 事務局長 谷口宏氏

コンカー テクノロジー本部 船越洋明氏

「2014年1月に実施した調査では、日本企業の生産性の高さは主に生産現場に限られていることがわかった。原価削減には熱心であったが、販売・管理費削減が進んでいないというのが実態。また、シェアードサービスやアウトソーシングなどが進むなか、経費管理は手作業であり、ホワイトカラーの生産性に対する課題も浮き上がった。海外拠点も急増しているなか、経費削減のみならず不正防止の観点からもグループ経費管理のシステム化、見える化が必要」(谷口氏)

「2014年12月15日~2015年1月26日に行った調査の結果では、スマートフォンが領収書電子化の対象デバイスになることによって、日本の文書電子化が一気に進むことが想定される。スマートフォンの利用が解禁された場合、『将来的にも導入は検討しない』と回答した企業は5%なのに対し、スマートフォンの利用が解禁されない場合の同回答者は22%と、4倍以上に増える結果となった」

日本文書情報マネジメント協会(JIIMA) 理事長 高橋通彦氏

JIIMA 理事長の高橋通彦氏は、「国税庁の統計によるスキャナ保存適応申請の承認件数をみると、スキャナで書類の保存を行っている件数は2013年でも133件となっており、規制が厳しいために結局使われない法になってしまっている。来年度の追加規制緩和要求として、スマートデバイスなどによる領収書などの記録を容認することと、一般書類に義務付けられたタイムスタンプを、適正事務処理を前提に不要にすることを掲げている」と語った。