日本電産と日本IBMは6月22日、日本電産グループのモーターを組み込んだ各種の生産設備・機器において、早期異常検知による稼働率向上と要因分析の効率化による停止時間の短縮を主な目的とする、ビッグデータ解析技術に関する取り組みを共同で開始したと発表した。
日本電産は2030年度の売上高10兆円を目指して新規大型事業を創生するため、自社グループ製品をIoT化して付加価値を高める戦略を展開しているとのこと。従来の売り切りモデルからIoTを活用したソリューション・ビジネスモデルへの転換を図り、保守サービスを含めたライフサイクル・サービスを提供することが大きな課題という。そのためには、故障を事前に把握する予知診断と、故障時に的確な対策を打つ要因分析の効率化が必要としている。
これを進めるために、日本電産はIBMとのオープン・イノベーションを進めているとのこと。IBMは、同社グループがグローバルで蓄積してきた異常検知・予知保全におけるスキルや知見を生かし、コンサルティング、ソフトウェアの活用、システム構築を提供するという。
具体的には、日本電産シンポのプレス機で早期異常検知による稼働率向上の技術開発を始めたとのこと。
従来は、プレス機の熟練技術者が監視システムの画面を見て異常発生の有無およびその対処法の判断を行っていたが、今回は各種センサーの相関関係から得られるデータを分析して、人が気付く前に異常を検知し、不具合発生前に対処できるシステムの構築を目指した。
最初に顧客ニーズを分析した結果、プレス機現場での不良要因の多くが金型起因であることが判明し、金型起因の問題を事前に予知することで稼働率の向上に繋がることが分かったという。
具体的には、業界として初めてというプレス機に各種センサーを装着して集めたデータを分析し、その結果から金型を含む製品異常発生の検知が可能になったとのこと。これにより、顧客サイドでは金型の状態を金型ヘルス・スコアという数値で監視すれば、金型起因の停止時間の低減や金型寿命を延ばすことができ、プレス機の稼働率向上に繋がるとしている。
今回発表のIoT化したプレス機とビッグデータ解析技術は、7月15日から18日に東京ビッグサイトで開催予定の「MF-Tokyo 2015(プレス・板金・フォーミング展)」に、日本IBMの技術支援を受けて出展する予定だ。
今後は、2015年中に日本電産グループの海外プレス機工場で異常発生時の要因分析に取り組むという。具体的には、従来のプレス機では製造不具合の要因究明と対策は個人の技量に依存していたが、今後はビッグデータ分析により高い精度で短時間に要因を究明し、属人化しない適切な対策が可能になり停止時間の短縮に繋げるとしている。
日本電産グループへの今後の展開では、今回開発のビッグデータ解析技術を利用した異常検出モデルを、プレス機以外の日本電産グループの機器・装置に展開して稼動率の向上に繋げるという。日本電産で十分に実証できた段階で、IoTソリューションとして同社グループの機器・装置に実装し、同社による外販も進めていく意向だ。