ウィンマジック・ジャパンは6月10日、国内外のビジネスの現状とセキュリティソフト「SecureDoc Cloud」の詳細に関する記者説明会を開催した。
米WinMagicは、1997年に設立され、世界84カ国以上に顧客を持つディスク暗号化ソフトウェアカンパニーだ。
記者説明会の冒頭では、米WinMagic 最高業務執行責任者(COO)のマーク・ヒックマン氏が「2014年は多くのアナリストが“データ侵害の年”と呼んでいるように、非常に大きなデータ侵害が数多く発生し、顧客情報が流出した」と指摘。2014年は22億5000万件のデータ侵害が発生し、その原因として「悪意ある部外者」が56%、「不注意」が24%を占めており、データ暗号化の必要性についてアピールした。
こうした状況下において、暗号化ソフトウェアの市場は多彩な分野へ拡大しているという。
まず、近年はWindowsをはじめとしたさまざまなOSでビルトインの暗号化機能が備わっているほか、ハードウェアに関しては自己暗号化ディスクドライブ(SED)も利用されている。
そしてもうひとつ、市場の中で急激に需要を増しているのがクラウドだ。現在はビジネスでもDropbox/box/iCloud/Google drive/OneDriveなど数多くのクラウドサービスが使われており、当然ながらクラウド上のストレージにもデータが保存される。こうしたクラウド上のデータにも、ローカルと同じくセキュリティが必要になってくるのだ。
同社が提供する暗号化ソフトウェア「SecureDoc」は、主要な2つのコンポーネントに分けることができる。「鍵管理コンポーネント」は、データセキュリティ管理で中核を成す鍵管理について、認証からアイデンティティ管理まですべてをコントロールするもの。あらゆるプラットフォームやデバイスで鍵管理を行え、データをセキュアなものにする。
もうひとつの「暗号化コンポーネント」は、データの安全性確保と侵入者によるデータの詐取を防ぐためのもの。コモデティ化により、BitLocker/FileVault/iOS/Androidをはじめ、将来的に他のプラットフォームで導入される暗号化についても管理が可能になるという。
ヒックマン氏は「サードパーティに任せるのではなく、安全な鍵を自分たちで管理していくことが重要だ。そこで弊社では“インテリジェントな鍵管理”というビジョンを掲げ、市場に製品を提供している。どのようなプラットフォームやデバイスでも、あらゆるデータについて企業全体を通した鍵の管理を実施し、データのセキュリティを担保できるのがSecureDocだ」と語った。
「SecureDoc Cloud」とは?
続いて、米WinMagic グローバルセールス・エンジニアリング担当バイスプレジデントのロス・アンダーソン氏が、10月に正式リリースを予定している「SecureDoc Cloud」について解説した。
アンダーソン氏は、職場におけるクラウド利用の現状について「企業がクラウド型のファイル共有サービスを利用する上で考えなければいけないのは、企業のデータを個人のデータと一緒に転送できてしまうことだ。どのような企業データがクラウド上にアップされているか把握できないため大変危険だ」と語る。
クラウド最大のメリットは、簡単にファイルを共有できる点にある。しかしこれは、IT管理者や企業にとって大きなリスクでもあり、クラウドが普及する中で克服していかなければならない課題だ。ユーザーはクラウド上へ保護されていないデータを次々とコピーする一方で、IT管理者はそうした行動自体を一切把握できない。ファイアウォールのルールでアクセス制御リスト(ACL)やグループ・ポリシー・オブジェクトなどをクライアント端末に課しても、ユーザーは何とかして抜け道を探す“イタチごっこ”である。
SecureDoc Cloudでは、リアルタイムなエンドポイントデバイスの暗号化により、個人のデータでも企業のデータでも、クラウドへ送られる前に暗号化することが可能だという。 クラウドに対する暗号化ソリューションで難しいのが、外部ユーザーへデータを開示する際の処理だが、SecureDoc Cloudはパスワードによりデータの保護を行う。これにより、SecureDoc Cloudのユーザーでなくても、入手した暗号化キーでクラウド上のデータにアクセスできる。
さらに、IT管理者が1回で全体のポリシーを適用できるのもポイントのひとつ。その指定範囲も細かく、たとえばDropboxなどクラウド全体はもちろん、個々のフォルダを指定することも可能だ。クラウドポリシーが定義されると、自動的にユーザーのクライアントデバイスまでプッシュ通知が行われる。
アンダーソン氏は「SecureDoc Cloudのインテリジェンスな鍵管理で優れている点は、企業側でコントロールできるということです。IT管理者自身が鍵を管理しているため、サードパーティのソリューションに頼ったり、他の人物が鍵にアクセスする心配も要りません」と語った。
シェア拡大を続ける日本市場でもプロモーションを強化
最後に登場したウィンマジック・ジャパン カントリーマネージャーの石山勉氏は、日本におけるビジネスアップデートについて解説した。
石山氏はまず、2014年にITRが発表した「ITR Market View:Endpoint Security Merket 2014(エンドポイント・セキュリティ市場2014)」を基に、日本国内ベンダーの暗号化分野における市場シェアを紹介。同社では2012年に34.5%、2013年に43.8%、2014年に51.1%とトップシェアを獲得し続けており、その割合も上がっている。
シェア拡大の要因としては、新しいビジネスモデルの展開および、2011年に開始したマネージドサービスにより、導入の敷居が下がったことが挙げられる。また、暗号化専業ベンダーとしての実績を受けて競合他社からの乗り換えが増えたこと、暗号化ソフトウェアの新たな利用形態が出てきたことも要因になっているそうだ。
SecureDocについては、従来のフルディスク暗号化だけでなく、新たな活用事例も生まれているという。たとえば、従来とはまったく逆で社外へPCを持ち出した際に一切起動させない、USBなど外部メディアの暗号化、BitLockerで暗号化したPCの一括管理、社内共有サーバ上にあるファイルやフォルダの暗号化などである。
「そして今後はさらに新しい需要として、クラウド上にあるファイルやフォルダの暗号化にも取り組んでいきます」と語る。
最後に石山氏は、日本市場におけるSecureDoc Cloudの戦略・展望について解説した。
SecureDoc Cloudは、従来のSecureDocに対するオプションソフトウェアとして提供されるため、既存ユーザーへのプロモーションを積極的に実施。また、クラウドストレージベンダーとの協業で、クラウドストレージ自体の訴求も図ってくそうだ。そのほか、新規パートナーおよび新規ユーザーの開拓、国内クラウドサービスへの対応も強化していくという。