2015年6月8日~12日の期間で、今年も国内最大級のICTテクノロジーイベントInterop Tokyo 2015(以下、Interop)が開催された。10日から千葉・幕張メッセで開催された展示会より、注目のブースを紹介しよう。
注目のIoTに関する展示とあって、多くの人が集まっていた展示ブース |
今年の注目テクノロジーは、やはり「IoT(モノのインターネット)」につきるのではないだろうか。コンシューマ向けには、ウェアラブルデバイスやスマートカーなどに人気が集まっている。企業向けには、第一次産業や工業、医療のほか、交通・電力などのインフラにおいても、大きな効果が期待されている。
その証明と言えるだろうか。展示会場に設けられた「IoT World」のスペースには大勢の来場者が訪れ、各社のブースの説明員に質問を投げかけたり、有識者の講演を真剣な眼差しで聴いたりしていた。
IoT元年と呼ばれる2015年のInteropだけあってか、各社のブースもより具体的な展示が増えていた。中でも注目したいのは、産業向けIoTのソリューションを展示していたネットワンパートナーズのブースだ。同社は、シスコシステムズのネットワーク製品を活用し、工場の生産ラインの監視を想定したシステムを会場内に作り、実際の動作をデモンストレーションしていた。
実際の工場を想定したIoTソリューション
工場やプラントなどには、さまざまな設備やセンサーが設置されている。これらをネットワークで相互に接続し、状況を監視したりデータを分析したりすることで生産性の向上を図る“スマート化”が注目されている。
ネットワンパートナーズのデモンストレーションは、「全ての工場にネットワークのインテリジェンスを」というテーマで、ネットワングループが提供するインダストリアルIoTの具体的な活用方法・ソリューションを説明するものであった。
具体的には、シスコシステムズの産業向けネットワークスイッチ「Cisco Industrial Ethernet(IE)シリーズ」と監視カメラを中核に、工場内ネットワークをインテリジェント化するというものだ。
デモの環境は、「生産ライン」「監視ルーム」「屋外」という大きく3つの領域に分かれている。各領域はCisco IE 2000/4000シリーズによって相互に接続されており、リング状のネットワークが構成されている。
説明員を務めていたネットワンパートナーズ ソリューション事業部 セールスエンジニアリング部 シニアエキスパートの砂川豊氏は、「この構成では、Cisco REP(Resilient Ethernet Protocol)を用いてリング型トポロジーを形成しています。一般的なオフィスで利用されるスパニングツリープロトコルに比べて、障害時の復旧が極めて早いという特長があります。24時間稼働し続ける工場などでは、こうした耐障害性は非常に重要な要素の1つです」と述べる。
過酷な環境でも稼働する産業向けネットワークスイッチ
ブースでひときわ目立っていたのが、水没したネットワークスイッチであろう。屋外を想定したエリアには、防水タイプの「Cisco IE-2000-8T67P-G-E」が水槽の中に設置されていた。もちろん単なる模型ではなく、実際にデモンストレーションで稼働している機器だ。
実際には、Cisco IE2000 IP67 シリーズはIP67規格(人体・固形物の耐塵型、水の防浸型)に、準拠するものである。つまり、連続的な“水没”時の稼働を保証するものではない。しかし今回のデモでは、Cisco IEシリーズの環境性能を確認してもらうために、あえて水没させているとのことだ。
「工場施設では、天井付近や産業機器の隙間などに設置されることが多く、ほとんどメンテナンスすることができません。IP67に準拠しているCisco IEシリーズであれば、そうした粉塵や埃の舞う生産ラインにあっても問題ありません。また、温度変化への対応にもすぐれており、摂氏60度からマイナス30度まで耐えられる設計になっています。つまり、直射日光や雨雪にさらされる屋外でも利用することが可能です」(砂川氏)
現場のスタッフと遠隔地の専門家がカメラやチャットでコラボレーション
ネットワンパートナーズで展示の重要な点は、過酷な環境で利用できるIoTユニットの紹介にとどまらないところである。つまり、実際に製造現場で利用できるソリューションとして紹介されている点だ。
生産ラインには、IP67規格対応ではない通常タイプのCisco IE-2000-16PTC-G-NXに監視カメラと警告灯が接続されていた。産業機器からアラートが発せられると、Cisco IEが直接通知をやり取りして、監視ルーム側に警告があげられる。Cisco IEスイッチには、「アラーム端子」も設けられており、サーバなどを介さずに警告灯を点灯させることも可能だ。
監視ルーム側には、産業向けスイッチとしては今後急速に普及が見込まれる全ポートギガビット対応タイプであるCisco IE-4000-4GC4GP4G-Eが設置され、生産エリアと同様に監視カメラと警告灯が接続されていた。非常時には、こちらの警告灯も点灯し、監視担当者にもトラブルが伝わるようになっている。こちらのポイントは、カメラ付きのコラボレーションデバイス「Cisco DX80」が接続されているところだ。
「今回のデモの要は、監視ルームのDX80と生産エリアのiPadを用いて、現場のスタッフと監視ルームの専門家がコラボレーションするところです。これまでは緊急の連絡方法と言えば電話のみで、細かな情報を伝達したり、指示を出したりするのは困難でした。しかし、このシステムであればテレビ会議の仕組みを用いて、映像で状況を把握できるので、現場と同等の状況で判断することができ、また画面上にマニュアルを表示したりと、細かな支援が迅速に行えるようになります」(砂川氏)
これまでのIoTと言えば、各種の機器からデータを収集して分析するなどの漠然とした話題が多かった。ネットワンパートナーズの展示は、IoTの活用方法を具体的に示し、有用性が目に見えるものであった。もはやIoTは、“将来的な可能性”ではなく、目の前のソリューションとなったのだ。