アドビ システムズは、同社のコーポレート・コミュニケーションブログ「Adobe Japan Corporate Communications Blog」にて、同社が実施したクリエイティブ活動に関する調査において、日本が世界のデザイントレンドとクリエイティブ経済に及ぼす影響に世界が注目していることが明らかになったと発表した。
同社が今回発表した調査結果は、日本のクリエイターを対象に実施した調査「Creatives in Japan」に加え、同社が展開するクリエイター向けのSNSサイト「Behance」の500万人近いクリエイターのプロジェクトからデータとインサイトを抽出することで、日本のクリエイターたちがどのように考え、何に取り組み、何を目指しているかを詳細に分析したもの。その結果、日本では現在モバイルとデザインの再生が起きていることが明らかになったものの、その一方で、日本のクリエイターコミュニティは国内におけるクリエイティブ活動や自身の作品の評価を控えめに見ており、中には懐疑的な見方すらしていることが判明したという。これは、世界各国が日本のデザインに魅了され、日本をクリエイティビティの最先端を行く国とみなしている評価とは正反対の結果となった。
主な調査結果として、日本のクリエイターの66%はクリエイティブ活動とデザイン思考はビジネスにおいて重要度が増していると考えていることが明らかとなった。最大の伸びが見られるのは若年層(18~22歳)であり、その層ではBehanceのようなソーシャル・シェアリング・コミュニティへの新規加入が前年比205%という目覚ましい伸びを示しており、新しいメディアを進んで試したりモバイルやソーシャル・プラットフォームを介して作品を共有したりする積極的な姿勢を見せているという。こうした層のクリエイターたちは、イラスト、描画、グラフィックデザインの3つの主要分野に注力しているということだ。
若年層のみならず、全体においても昨年1年間でBehanceに加入している日本のクリエイターのモバイル活動は65%増加。これは、ネットワーク接続を利用したモバイル・ワークフローの必要性が、納期の短縮、人材不足、ワークフローの圧縮などによって高まり、場所を問わないクリエイティブ活動に評価が高まっていることを示しているとしている。さらに、日本のクリエイターの半数以上がモバイルによってクリエイティブ活動のあり方が変化していると考えており、74%が効率的なクリエイティブ活動への需要が高まっていると考えていることが明らかになった。また、日本のクリエイターは新しいツールやプロセスを習得する多大なプレッシャーにさらされており、今こそモバイル化されたワークフローの実験を始めるべき時であることが証明されたとしている。
また、日本国内における地域ごとのクリエイティブ活動についての調査では、東京は日本の他の都市と比べて12倍以上のクリエイターが集中していることが明らかとなった。東京は日本の主要な美術学校の拠点であることに加え、幅広い専門分野にわたる多数のクリエイターを擁していることから、今後も東京の影響力が増し続けていくと予測している。なお、トップ5には大阪市と京都市、福岡市が入っており、人口の観点からより小規模な都市が、横浜や札幌のような大規模な都市より多くの作品を創出している点は注目に値するとしている。
このほか、Behance上で日本のクリエイティブ分野として最も重視されているのは「イラスト」で、その次に重視されている「グラフィックデザイン」と比べて2倍以上の評価を得ているという。これは日本のイラストが世界のクリエイティブ・コミュニティに対して極めて大きな影響を及ぼしていることを示しているとしている。新しい世代のクリエイターたちは、本や新聞、雑誌などのアートコンテンツからイラストの刺激を得ていることが明らかとなった。このことは、日本に雑誌、刊行物、漫画、キャラクターデザイン、美術、アニメ、インダストリアルデザインなど多様なイラストワークが存在することを物語っているとしている。
最後に、同ブログを執筆したアドビ Behance責任者兼コミュニティ担当バイスプレジデント Scott Belsky氏は、「18~22歳のクリエイターは新しいメディアを試そうという積極的な姿勢が見られることから、急速に成長している東京でのクリエイティブ活動とイラストの未来に対して楽観的に見ています。世界のクリエイティブ・コミュニティは日本のクリエイターとの関わりを持ちたがっています。私たちは皆さんの作品に興味を抱いており、Behanceを通じてさらに多くの作品に出会うことを心から楽しみにしています。アイデアの相互交流によって、クリエイティブ活動の中心地としての東京、そして日本全体の地位はいっそう揺るぎないものとなるでしょう。私たちは今後の日本に期待にしています。」と述べている。