6月5日、米DellよりDell Cloud Client Computing エグゼクティブ・ディレクタのジェフ・マクノート氏が来日。同社のVDIの戦略について説明した。そのなかで同氏は、米国等ではすでにリリース済みの「Wyse vWorkspace」を今秋国内でリリースすると語った。
ジェフ・マクノート(Jeff McNaught)氏は、Dell Cloud Client Computingのマーケティング担当エグゼクティブ・ディレクタ兼最高戦略責任者だ。同氏は1987年にエンジニアとしてWyse社に入社。デルによるWyse社の買収を契機にデルに入社し、以来、デルと元Wyse社のスタッフで構成される専門チームを率いて網羅的なデスクトップ仮想化のマーケティングを主導している。
同氏は冒頭、DellとIntelが行ったグローバルでの働き方に関する調査を踏まえ、今後のクライアント環境について、「仕事は9-5時ではなく、いつでもどこでも仕事ができることが必要になる。モバイルデバイスを活用すれば、そのようなことが可能になる。従業員のワークライフバランスのため、デルはなるべく多くのデバイスを提供しようと思っている。PCの時代からマルチデバイスに移行するとマイケル・デルも言っており、今後はさまざまなデバイスを利用して業務を行うようになるだろう。ただ、アメリカでは自宅で作業するが一般的だが、ヨーロッパでは法規制がある。そのような規制の中でどのように生産性を高めていくかが課題となっている。そのため、どのようなテクノロジを備えるがが重要だ」と指摘した。
そして同氏は、そのためにデルがどのようなテクノロジを提供しているかを説明。同氏が最初に挙げたのは暗号化だ。
「デルではファイルベースの暗号化機能であるDell Data Protection(DDP)を提供している。ファイルベースの暗号化はディスク全体ではなく、ファイル単位に暗号化できるメリットがある。また、OSに影響を与えないため、動作が軽快であるというメリットもある。さらに、リモートで管理者が管理できる点や、メール添付/USBへの移動でも、暗号化がそのまま引き継がれる点も特徴だ」 (ジェフ氏)
そのほか、セキュリティ向けでは、Protected Workspaceという製品もリリースしている。これはPC上に作成されるコンテナと呼ばれる隔離されたメモリ環境のことで、ネイティブPCから切り離されたウェブブラウザやドキュメントビューアを実行することができる。
「Protected Workspaceはシンプルな構造で、Windows、Android、iPadなどのタブレット上で動作させることもできる。これを提供することで、セキュリティ要求の高いユーザーもモバイルで利用することができる」(ジェフ氏)
デルではクライアント向けに、「デル クラウド・クライアント・コンピューティング」という戦略を推進している。クラウド・クライアント・コンピューティングは、端末をクラウドのテクノロジーを利用しながら、より高機能なものにしていくという戦略だ。代表例はVDIだが、同氏はVDIのメリットとして、さまざまなデバイスをいろいろな場所で利用することが可能な点、クライアント上のソフトを減らすことができ、管理をシンプルにすることができる点、セキュリティを向上させることができる点、管理費用を低く押さえることができる点という4つを挙げた。
そしてデルでは、VDIをさらに浸透させるために、VDIを簡単に設計、デプロイ、運用できるソリューションに積極的に投資を行っているという。
1つ目はリファンレスアーキテクチャだ。ジェフ氏によれば、リファンレスアーキテクチャは、VDIをデプロイするためのレシピのようなもので、Microsoft、Citrix、VMwareなどの確認してもらいながらリリースしたもので、スモール、ミディアム、ラージ、それぞれの規模に対応できるという。また、政府、教育、モビリティ、ヘルスケアについては、業界に特化したものを提供しているという。
2つ目はアプライアンスだ。
「アプライアンスはMicrosoft、Citrix、VMwareの協力の下、サーバ、ストレージ、ネットワーク環境にソフトウェアをプリロードするもので、シングルサーバで実現する。電源投入後、数時間でVDI環境を構築できる。VDI、RDS(リモートデスクトップ)、アプリやOSのストリーミングという3つの分野で利用できる。さらにGPU仮想化を使うことで、AutoCADなどハイエンドなグラフィックシステムにも対応できる」(ジェフ氏)
アプライアンスについては先月、Citrixのプライベートイベント「Synergy」で発表したのが、「Dell Appliance for Wyse - Citrix」だ。この製品は1つのサーバでXen Desktopを300シートサポートし、一人当たりコストは400ドルからとなるという。400ドルはデルのこれまでの製品の中でもっとも安価になるという。
また、5月21日(米国時間)にはVMwareとの協業による「EVO RAIL Horizon Edition」という新製品もリリースした。これは、より大きな構成に対応したアプライアンスだ。そのほか、Citrixの環境をスケーラブルな環境で提供する「Dell XC Web-Scale Converged Appliance」も提供している。
「これらはすべて第13世代のPowerEdgeで構成され、非常に電力消費効率が高い」(ジェフ氏)
そして、今年の後半には国内で、デルのコネクションブローカー製品「Wyse vWorkspace」を投入する。これは、これまでCitrix、VMwareの製品に手が届かなかった顧客向けのもので、Hyper-Vを利用している。デプロイが簡単でコスト効率が非常に高いものだという。すでに米国やヨーロッパでは提供されているが、非常に伸びているという。
「vWorkspaceはスケーラビリティがあり、理論上は100万シート以上をサポートできる。デプロイも簡単で、4000台の環境を40分で構成可能だ。モニタリング製品も標準で組み込まれている」(ジェフ氏)
Wyse vWorkspaceは、サービスプロバイダ向けに設計されており、数台から利用可能だという。
そして、ジェフ氏は最後に、WyseのThinOSにも触れ、
「VDIでは、顧客からは管理やセキュリティ、起動が高速で低消費電力だということで、シンクライアント、ゼロクライアントが最も良いソリューションだといわれている。シンクライアント向けのOSには、Windows、Linux、ThinOSの3つがあるが、シェアはそれぞれ1/3だ。ThinOSはWyseがセキュリティを高めるために開発した。開発以来、セキュリティのインシデントが発生したという報告は1件もないプレミアムなソリューションだ。業界でもっとも信頼性の高いソリューションだ」と、セキュリティに対するアドバンテージを強調した。