富士通研究所は6月9日、5G通信システムの実現に向け、ミリ波ビーム多重化によるマルチアクセスに成功したと発表した。

スマートデバイスの普及に伴い、無線データ通信のトラフィック量は1年で2倍弱のペースで増大している。そのため、10Gbpsの通信速度を実現する5G通信システムの無線通信技術の研究が進められている。ユーザーあたりの通信容量を増大させるには、携帯基地局などがカバーするエリア半径を小さくして収容数を減らすことや、ミリ波帯などの広い帯域幅を利用できる周波数帯を使用するなどの方法がある。

5Gや無線LANで想定されるネットワーク構成

ミリ波帯では、アンテナサイズを小さくすることができるため、アンテナ素子の数を増やすことで空間を小さく分割し、カバーするエリアを小さくした基地局に照射することが見込まれている。しかし、従来のアレーアンテナでは、ビーム形成時に、目的方向の電波とは別方向の電波が発生してしまうため、ユーザー多重化のために複数のアレーアンテナを設置するとビーム間で干渉が起き、多数のアレーアンテナを並べることが困難だった。

富士通研究所は今回、60GHz帯のミリ波を用いて、別方向の電波が細い電波ビームで64パッチのアレーアンテナを開発。同アンテナを用いて、60GHzの周波数において1.2GHzの帯域幅で1ユーザーあたり3Gbpsの通信の通信容量を実現する無線機を試作したところ、4ユーザーで互いに干渉せずに、世界最高レベルとなる12Gbpsの通信容量を実現した。

試作した64パッチのアレーアンテナ

同社は今後、ミリ波無線機のさらなる高速化とビットレートあたりの低消費電力化を進め、2020年頃の実用化を目指すしている。