理化学研究所(理研)は6月8日、高輝度光科学研究センター(JASRI)のX線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free Electron Laser)施設「SACLA」が新たなXFELビームライン「BL2」の共用運転を開始し、複数のXFELビームラインを同時に稼働させたことを発表した。

従来のXFELビームライン「BL3」は、0.1nm以下のX線レーザーを安定的に供給することで、微細世界の研究に活用されてきたが、世界で共用運転を実施しているXFELビームラインはこのBL3と米国のLinac Coherent Light Source(LCLS)が有するビームラインの2本だけであり、国内外の大学や研究機関、産業界の利用者からXFELの利用機会の拡大ニーズが強かったという。

今回、共用運転を開始したBL2はSACLAにとって2本目となる共用XFELビームラインという位置づけで、2013年度から整備が進められてきており、2015年4月16日には1パルスあたり100μJを超す出力を実現し、翌4月17日に、BL2による初めての利用研究課題として、理研放射光科学総合研究センターの大浦正樹ユニットリーダーらの研究グループが実験を実施したとする。

なお、BL2は、XFEL利用研究の重要ターゲットの1つである生物科学分野における利用が想定されており、理研では、BL3とBL2を効果的に運用することでXFELの利用機会を向上させ、学術・産業の発展に貢献していきたいとしている。

SACLAに設置されたBL2とBL3のアンジュレータの様子。右が既存XFELビームラインであるBL3で、左が新規XFELビームラインであるBL2のアンジュレータ。SACLAの全長約700mのうち、光源棟は約240mを占めており、100mを超える長さに渡って、BL2、BL3それぞれのアンジュレータがμmレベルで精密調整されている