米Integrated Device Technology(IDT)は、6月2日、高速・高効率半導体素材であるGaN(窒化ガリウム)ベースのデバイス技術を米Efficient Power Conversion(EPC)と共同で開発すると発表した。通信・コンピューティング、ワイヤレス給電。高周波(RF)の3分野で、IDT製品にEPCのGaNデバイスを組み込み、高速・高効率化を図る。

通信・コンピューティング部門では、GaNの低容量およびゼロQRRをチップスケールパッケージの低インダクタンスと組み合わせることで、高周波・高効率が得られる。EPCのGaN技術とIDTの高精度な通信およびシステム化ノウハウと組み合わされることで、電力密度を向上し、通信・コンピューティングインフラに高い競争優位性がえられるとしている。ワイヤレス給電分野に関しても、EPCのGaNのノウハウとIDTの高効率を実現する高精度ソリューションを組み合わせることで、ワイヤレス給電はさまざまなところで使用できるようになり、高効率で費用対効果の高いソリューションを実現できる。

A4WP(Alliance for Wireless Power)コンソーシアム プロトコルの高共鳴ワイヤレス電力伝送規格の動作周波数は、6.78MHzであり、GaNの高速かつ低損失スイッチング機能により、有線と同レベルの効率が実現できるという。

高周波(RF)でも、両社は通信インフラ市場のRF製品群を共同で構築する予定であるが、正本計画は、今後、具体化する。

「IDTのような革新的な企業では、シリコンの限界回避策として実績のあるGaN技術を各社ソリューションに組み込む事例が増えています。われわれは、EPCの高速で効率のよいGaN技術をIDTの顧客に届けるため、IDTの技術者とともに仕事をするのを楽しみにしています」と、EPCのCEO兼EPC社共同創設者のAlex Lidow(アレックス・リドウ)は述べている。彼は、独Infineon Technologiesに最近買収されたInternational Rectifier(IR)の創業者である故Eric Lodowの子息で、IRのCEOを務めていたが、2007年にIRの仲間とともにスピンアウトしEPCを創業した。EPCはGaNデバイス専業のファブレス・ベンチャー企業で、エンハンストモードGaN-on-Si(eGaN)FETを世界で最初に実現したことで知られる。同社は、製造は台湾のGaNファウンドリに委託しつつ、企画とデバイス設計を行っており、航空宇宙応用からオーディオアンプへの応用に至る広範囲の用途向けのGaNを販売している。同氏は電力管理用GaNデバイスの普及に尽力し、「GaN Transistors for Efficient Power Conversion、2nd edition (wiley 2014年)」などの啓もう書の編著者としても知られているが、高速・高効率GaNデバイスのさらなる普及のためにパートナーをさがしていた。GaNとSiデバイスを融合させ、従来のシリコンベースの電子システムに一部GaNを採用しさらに高速・高効率・低消費電力化を目指す今回の協業に業界関係者は注目している。