カスペルスキーは6月4日、モバイル端末向けの次世代通信規格「5G」の必要性について、同社のブログ「Kaspersky Daily」で解説している。

5Gの運用開始は2020年からとされている。現時点では、5Gを運用する周波数や5Gに必要な変調方式や符号化方式について、さまざまな憶測が飛び交っている段階。1~100GHzの範囲でさまざまなキャリアを使用する計画となっている。新しい通信規格では最大帯域幅が利用する可能性が高い。マイクロ波の周波数を使用することで、通信エリアが極めて狭いフェムトセルやピコセルが登場する。

5Gの必要性はモバイル通信端末だけではないと指摘されている。今後IoT(モノのインターネット)機器の普及が見込まれ、純粋にネットに接続する端末が今より増えるからだ。屋内でさまざまな機器が通信をするためには、現在の4Gよりはるかに大きな通信容量が必要となる。極端な話だと、各家庭で100台のスマート機器がネット接続される可能性もある。屋内では、累計で数10Gbps以上の帯域幅が必要だと推測している。

5Gでは遅延時間(ping応答時間など)が1ミリ秒以下にまで短縮されるという。その恩恵を受ける機器は、拡張現実と仮想現実の製品やサービスで、リモートで外科手術を行う遠隔医療や自動運転車などで期待されている。

また、「タッチインターネット」の普及の促進にも役立つという。タッチインターネットでは、アプリがすべてクラウドに移され、利用者はタッチ操作対応ディスプレイが搭載されたシンクライアントを使用するため、遅延のない通信が求められる。

Wi-Fiと比較しても5Gのメリットは大きい。Wi-Fiは、宅内での無線通信に重宝されているが、問題点もいくつかある。多くの人が感じるのは、壁などの障害物がある環境では、極端に通信状態が悪化することだ。

LTEからWi-Fiに切り替える間に、実行中のセッションがすべて中断されてしまことが課題として今なおある。問題解決に向けた取り組みが進められているが、進展は遅く、頓挫する可能性もあるという。5Gは、Wi-Fiの不便さを解消し、宅内の主力の通信手段となる可能性も高いという。

宅内の通信端末が増えることで、新たなセキュリティポリシーが重要になると指摘されている。例えば、ハッカーがランサムウェアで、宅内の端末をブロックしたら、あらゆることで障害が発生する恐れがある。また、インターネットに接続された機器の数が多くなれば、それだけ簡単にボットネットが作られるようになり、DDoS攻撃の規模も影響もさらに大きくなる。さらに、伝送速度が速くなれば、犯罪者が悪意ある小さなコードをひそかに送信したり、トラフィックを傍受した後で痕跡を消したりするリスクも高くなる。

現時点で提案されている5G向けのセキュリティの諸概念は、クラウド方式を基盤としている。ネットに接続される5G対応クライアント機器の演算能力が大して高くないことを考えると、理にかなったアプローチだという。掃除機、電球、アイロンにそれぞれ別のアンチウイルス機能を用意するのは、あまり現実的ではない。

セキュリティソリューションでは、モバイルデータや、キャリアレベルで実施されるSMS解析データが活用されることになるという。解析データは、悪意あるマルウェアの活動や、ネット接続された機器上での不正な動作を検知する上で役立つことになる。