ティントリジャパンは6月4日、VM単位のQoS制御「VMパフォーマンス保証」や、任意の時間の状態に瞬時に復旧できる「SyncVM」という新機能を搭載した、同社のスマートストレージ「Tintri VMstore」向け新OS「Tintri OS 3.2」を発表した。
同社 職務執行者社長 河野通明氏は新OSを「創業時のティントリのスタッフが抱いていた『仮想化ストレージはこうあるべき』と思った姿を実現した集大成の製品となる。第1章の最後のページだといえる。明日から、第2章が始まる」と、目標としていた製品の骨格となるべき姿を実現した点をアピールした。
QoS機能の「VMパフォーマンス保証」では、各VMのIOPS(Input Output Per Second の略。1秒間に可能なI/Oの回数)の下限値(MIN)と上限値(MAX)を個別に設定することにより、優先させるべきVM(仮想マシン)の遅延を減らし、処理スピードを向上させることが可能になった。
同社はこれまでQoSとして、VMごとのワークロードに合わせて自動的にストレージのリソースを割り当てる「QoSの自動化」機能を標準で提供してきたが、サービスプロバイダからの契約したSLAに即した運用がしたいというニーズに応えるべく、今回、上限/下限の指定を可能にしたという。
ただ、米Tintri 技術担当 VicePresident Rex Walters(レックス ウォルターズ)氏は、基本的には従来からある自動制御で十分だと強調する。
今回の下限値(MIN)と上限値(MAX)設定は、あくまで、マシンの処理能力を超えた場合にどのVMを優先させるのかという指定であり、現実にはユーザー企業で能力を超える処理のリクエストがあるケースは少なく、限界に達していないのであれば、上限値を設定してあえて制限を加えるべきではないというのが同社の考え方だ。通常は「QoSの自動化」機能で十分だという。
そのため重要になるのが、遅延状況の見える化だが、同社では管理画面で、サーバ、ネットワーク、ストレージ(フラッシュ、ハードディスク、コンテンション(リソース競合))、スロットル(過負荷制御)に分けて遅延状況を確認できる。下限あるいは上限の設定が必要なのは、コンテンションにより遅延が発生している場合だという。
「VMパフォーマンス保証」は、管理者が10秒ごとに更新されるIOPSと遅延状況を見ながら、下限値(MIN)あるいは上限値(MAX)を設定する。指定は画面から直接数字を指定することもできるが、MAX、MINのバーをマウスで上下させることでも指定可能だ。
設定はすぐに反映され、結果は10秒ごとに表示されるので、随時、調整していけばよい。なお、「VMパフォーマンス保証」は、OSの標準機能として提供される。
一方「SyncVM」は、「Tintri OS 3.2」のオプション(参考価格138万円~)として提供される。
「SyncVM」は、VMの規模やサイズに関わらず数分でVM単位のコピーと、「タイム トラベルVM リカバリー」という2つの特徴を持っている。
VM単位のコピーでは、本番稼働しているVMのスナップショットのコピーから、vDisk単位で任意のVMにデータを即座に更新する。アプリケーション開発環境やテスト環境構築の際、有益な機能だという。
「タイム トラベルVM リカバリー」は、以前取得したスナップショットのバージョン間を、前後に移動して選択し、最適なリカバリーポイントに復旧させるための機能。リカバリー後も以前のスナップショットとパフォーマンス履歴は保持されるため、任意の時点に何度もリカバリーすることが可能だという。
レックス ウォルターズ氏は、この使用例は「SyncVM」の一部の使い方にすぎず、「ユーザー企業がさまざな使い方を現在模索している」と語り、「SyncVM」の利用範囲が広いことをアピールした。発表会では、実際に数秒でリカバリーする様子がデモされた。
このほか、「Tintri OS 3.2」機能強化ポイントとしては、VMコンシステントスナップショットの取得とクローニングをティントリの管理GUI上ならびにREST APIで行うことを可能にしたHyper-V対応の拡張、およびクラウド環境などで複数の企業や部門が同一のTintriVMstoreにアクセスする際に、ルールを定義することでディレクトリごとにアクセスを制御するマルチ テナンシー対応がある。
また、ティントリのデータレプリケーション ソフトウェアである「ReplicateVM」にて、別筐体の「 Tintri VMstore 」にデータを1分間隔で複製することも可能となった。
レックス ウォルターズ氏は、仮想化環境ではアプリ単位(VM単位)の管理が重要だと強調する。
「ビジネスは、アプリケーションで考えないといけない、これは、どんなビジネスでも同じだ。インフラはコストで、アプリケーションやサービスが売り上げをあげている。これが我々の一番大きなメッセージだ。そして、アプリケーション、仮想マシン/仮想ディスクことのポリシー管理が重要だ。インフラ単位にやるのは、管理が難しい 」(レックス ウォルターズ氏)
その上で、レックス ウォルターズ氏は、アプリケーションの最適化されたストレージに必要な要素として「管理性(Manageability)」、「パフォーマンス(Performance)」、「価値(Vlaue)」を挙げた。
このうちもっとも重要なのが管理性で、ティントリの特徴はVM単位の管理、自動化、見やすいGUIの提供という点だという。そしてパフォーマンスでは、フラッシュのヒット率が99%と高い点、QoSがVM単位であること、遅延の見える化ができる点が、価値では性能と容量をゲージで表示している点と、VMの単価を重視していう点を挙げた。
なお、明日から始まる第2章について河野社長は、「さらに洗練された機能にすることと、新しい市場にアジャストすることをやっていく」と述べた。