アドビ システムズと玄光社「コマーシャル・フォト」は5月22日、広告写真の最新動向やAdobe PhotoshopやLightroomのテクニックなどを解説する「デジタルフォト&デザインセミナー 2015」を、東京都・渋谷ヒカリエ ホールにて開催した。

ここでは、同日15:40~16:30に「レタッチセッション」として実施された、博報堂プロダクツ フォトクリエイティブ事業本部 REMBRANDT レタッチャー 浦田淳氏によるセミナー「広告ビジュアルの表現力を高めるレタッチテクニック」の様子をレポートする。

セミナーの講師を務めた博報堂プロダクツ フォトクリエイティブ事業本部のレタッチャー 浦田淳氏

ハイスペックなPCと液晶ペンタブレットを活用

同セミナーの講師を務めた浦田氏は、博報堂プロダクツのフォトクリエイティブ事業本部に所属するプロのレタッチャー。同部署にはカメラマンとレタッチャーが多数在籍し、写真のみならず映像作品も手がけているという。

同氏のPhotoshop歴は20年で、レイヤー機能が初めて搭載されたバージョン3.0からのユーザーだ。浦田氏は各バージョンでの進化の過程を振り返り、「画期的な進化ポイント」としてバージョン4.0の「調整レイヤー」、バージョン7.0の「修復ブラシ」、CS2の「スマートオブジェクト」、CC2014の「ぼかしフィルター」などを挙げた。

浦田氏はPhotoshop歴20年のベテランレタッチャー。画期的な進化として「調整レイヤー」(ver.4)や「修復ブラシ」(ver.7)などを挙げた

ちなみに浦田氏が今回のデモで使用した機材は、PC本体が「HP Z840」。特筆すべきは、GPUに「Nvidia Quadro K5200」を2基搭載している点だ。同マシンについて同氏は「4K以上の映像制作(特に4K以上のRAWデータの再生)において非常に利点が大きく、信頼性や完成度の高さにも満足している」と述べた。

また、レタッチ作業にはワコムの13.3型液晶ペンタブレット「Cintiq Companion 2 (DTH-W1310H/K0)」を活用していることもあわせて紹介。同製品は、PCと接続するケーブルを外すとWindows 8.1を搭載したタブレット端末として利用できることに加え、CPUにはCore i7 5557Uプロセッサー/3.1GHz、メモリーが16GB、ストレージには512GBのSSDを搭載しているという高いスペック面からも「非常におすすめ」だという。

浦田氏はレタッチの作業環境としてワコムの液晶ペンタブレット「Cintiq Companion 2 (DTH-W1310H/K0)」を紹介した

マスク制作の際にペンツールでパスをキレイに描くには…

ここからは、実際のグラフィック広告の作例を見せながら、Photoshop上でどのようにして広告ビジュアルが制作されているかの解説となった。プロの現場でのレタッチ作業においての重要ポイントとして挙げたのが「効率的なマスク制作」と「スマートオブジェクトの活用」というふたつのキーワードだ。

まずは作例として、"未来の渋谷像"のCGと実際のクルマの写真を合成した、某自動車メーカーの広告ビジュアルを紹介。ここではクルマのボディを切り抜くために「ペンツール」を使用してパスを描く作業過程を見せてくれた。ペンツールは曲線で構成される被写体を選択するのに好都合だという。パスを綺麗に描くコツは「ポイントの間隔をできるだけ長く取り、滑らかな曲線に仕上げること」とのことだ。必要以上に細かくポイントを打つと、曲線がいびつになってしまうという。

ボディをグルリと一周パスで囲んだのち、パスパレットの下部にある点線の角丸アイコンをAltキー+クリック(Macの場合はoptionキー+クリック)して選択範囲を作成し(ここでは「ぼかしを半径」を1ピクセルに設定)、選択範囲に変換された状態でレイヤーパレット下部の「レイヤーマスクを追加」をクリックして作成したマスクを背景に貼り付けるまでの手順を実演。グリル部分やエンブレムといった部分についても、各パーツ毎に同様の手順で合成し、コントラストや色調などを個別に調整していくということだ。ちなみに、完成ビジュアルはクルマのボディにCGである背景がごく自然に映り込んでいる。このトリックについて浦田氏は、背景となるCGをプロジェクターで投影し、そのボディへの映り込みを素材としていると明かした。