東京都・銀座の資生堂ギャラリーは、ウォール・ストリート・ジャーナルで「ビエンナーレ必見ベスト5のアーティスト」に挙げられた台北在住の香港人アーティスト李傑(リー・キット)の個展「The voice behind me」を開催する。会期は6月2日~7月26日(月曜休)。開場時間は11:00~19:00(日・祝は11:00~18:00)。入場無料。
同展は、リー氏の「Scratching the table surface」を含むこれまでの代表作数点の他、新作として、テキストを施した布に描いた絵画、ダンボールに描いた絵画、ギャラリーの空間に合わせた映像作品など約10点が展示されるもの。リー氏は、布やダンボールに描いた絵画、ライトやタオルハンガーのような既製品と絵画を組み合わせた作品、映像と絵画を並べた作品など、日常の一部と見紛うさりげない作品を制作しており、一見それらは、日常性を礼賛しているようにみえるが、リー氏の問題意識は、身の回りの社会や政治状況にも及んでいるという。自宅のテーブルの表面を指でひっかき続ける様子を映像や写真でとらえた代表作「Scratching the table surface」には、無意味に思える行為を通じ、高度経済成長以降、効率のみを追求するようになった都市への静かな批判を込めているということだ。
また、同展のキーワードは、不安、孤独、呼吸などである。その背景には、政治や社会的格差へのフラストレーション、日常生活に伴うストレス、逃れようのない孤独などがあるということだが、リー氏は「悲観的であることは楽観的でもある」と言う。「自分が慣れ親しんでいると同時に疎外されていると感じる声が常に背後にあり、その存在はほとんど耐え難いが、受け入れるしかない」というコメントもしており、そのメッセージは同展の「The voice behind me」というというタイトルにもつながっている。
また、関連企画として、リー氏が本展の作品について解説するギャラリーツアーが開催される(日英通訳付き)。開催日時は6月6日14:00~14:30。参加費無料、申込不要。
なお、リー・キットは、1978年香港生まれ。2008年まで香港中文大学美術学部修士課程にて学んだ後、国内外の展覧会に数多く参加。2013年のヴェネチア・ビエンナーレでは香港館の代表に選ばれ、ウォール・ストリート・ジャーナルで「ビエンナーレ必見ベスト5のアーティスト」に挙げられた。これを機に世界中から注目を集めたリー氏は2015年には第12回シャルジャ・ビエンナーレ(アラブ首長国連邦)に参加、2016年にはゲント現代美術館(ベルギー)やウォーカー・アート・センター(アメリカ)での個展が予定されている。