ゲーミフィケーションといえば、得点やバッチなど、ゲームの要素を取り入れることだが、これをマーケティングや顧客サービスに応用する事例が広がっている。
では、従業員の生産性にもゲーミフィケーションを応用できるのか? OpenForumが「ゲーミフィケーションはオフィスをどう変えるのか?(原題:How Gamification Can Change Your Workplace)」という記事で識者の意見を紹介している。
ゲーミフィケーションが必ずうまくいくとは限らない
ゲーミフィケーションといっても、ゲーム感覚で仕事をするわけではない。従業員の業績という文脈では、成果に対するポイントやバッチの付与といったゲームの要素を取り入れて、(願わくば楽しみながら)業績をアップしてもらおうというものだ。
そして、従業員のエンゲージメントという点では、ゲーミフィケーションの効果はある程度実証されている。調査会社のAberdeen Groupの調査によると、48%の従業員が「ゲームのような戦略が導入されるとエンゲージがアップする」と回答している。
このようなことからAbedeen Groupは、ゲーミフィケーションは新しく入社した社員のエンゲージに有用だとしているが、導入している企業は17%にとどまるとも報告している。
一方で、Gartnerは「ゲーミフィケーションを応用したシステムの80%が、正しく実装されない場合失敗に終わる」としており、ゲーミフィケーションは簡単な戦略ではないことがうかがえる。
だが、ゲーミフィケーションよりも大きな視点で「常時アクセスできる流動性のある学びこそが大切だ」と学習・教育向けソフトウェアを手がけるInstructureのCEOであるJosh Coates氏は主張する。
Coates氏は、従業員のエンゲージメントを改善するために今後技術が果たす役割は大きくなると見る。「事業で最も大切な要素は人であることに気がつき始めた。重要なのは人だ。技術については、企業にとって重要な人をどのように育て形作るかという点で見過ごされがちだった」と言うように、今後3~5年でこの分野の技術利用が大きく進むと予想している。
では、技術でどのように支援できるのか? 「ゲーミフィケーション一辺倒ではない」というのが彼の予想で、その1つが学習分野だ。現在多くの企業が対象者を部屋に集めた1対多のトレーニング(研修)を行っているが、これが大きく変化するという。学習はもっと短時間に自発的なものになり、「今日は◯◯規制について、新しく加わった事項を学習した」などという形で、学習したことを共有しあうようになるのでは、との予想を披露している。
「3日間の詰め込みトレーニングではなく、5分のセッションを20回やるような形になるだろう。技術はこれを支援できる」とCoates氏。そして、企業の幹部たちは、「業績」と優れた社員の「維持」が今後さらに大きな課題になると予想する。
優秀な社員は学び、ステップアップの意欲が強い。社員のエンゲージを重要視して環境を提供しなければ、このような社員の維持は難しくなるといえそうだ。