英Sophosの日本法人「ソフォス」は5月21日、2016会計年度の国内事業戦略について都内で記者会見を行った。同日より、クラウド型の総合セキュリティソリューション「Sophos Cloud(ソフォスクラウド)」の日本語版提供を開始し、対前年度比で20%の成長を目指す。
ソフォスクラウドを完全日本語化し提供へ
会見で、代表取締役社長の纐纈 昌嗣(こうけつ まさつぐ)氏は、「昨年度(2015会計年度)は30%の成長を見せると言っていたが、少し届かなかったものの、肉薄する業績を上げることができた」と、全社一丸となって、高い目標にコミットできた成果を語る。
業績を牽引したのはUTM製品。ソフォスはもともとソフトウェアのセキュリティ製品を得意としていたが、ハードウェアアプライアンスやUTMが非常に好調で、売上構成比もソフトウェアにやや届かない程度にまで増えてきているのだという。
ただ、今年のソフォスはそのソフトウェア製品に属するクラウドソリューション「Sophos Cloud(ソフォスクラウド)」の日本語版を提供し、拡販に力を入れていく。この製品を含む基本方針は以下の3点となる。
テクノロジー:セキュリティオートメーションの推進
製品:ポートフォリオを拡大(ソフォスクラウド、暗号化、モバイル)
パートナー:「チャネル・ファースト」を強化。エンジニアの育成も
セキュリティオートメーションの推進では製品の「ソフォスクラウド」を含め、エンドポイントセキュリティとUTMによるネットワークセキュリティを相互連携させる。これは、昨年11月に発表したオートメーション構想の実現に一歩近づけるもので、「それぞれのセキュリティコンポーネントがインテリジェントにコミュニケーションし、ソフォスのセキュリティラボがウイルスや脅威の分析を行い、クラウドを経由して一種のビッグデータとして解析する仕組み」(纐纈氏)だという。
簡潔に言えば、近年マルウェア対策の主流となりつつあるサンドボックス機能をクラウドサービスとして提供。あらゆる企業の検体をソフォスクラウドにあげることで、ビッグデータのようにマルウェアの解析ができ、なおかつその分析結果も各ユーザー企業に提供できるというわけだ。また、エンドポイントセキュリティとUTMが情報を共有することでもより高いセキュリティ対策に繋がる。
ソフォスクラウドは、完全な日本語対応を実現しており、英語に不慣れな日本の中小企業でも使いやすいようにローカライズされている。UTM製品は多くの場合で中小企業に導入されており、実際に同社の売上も6割がそうした企業が対象になるという。これらの企業は情報システム部門も数人いればいい方で、セキュリティ専門家がいるところはまれ。そうした企業に対して「エンジニアが苦労せず、何とか対処できるソリューションを提供したい」(纐纈氏)という思いから、オートメーション構想をソフォスとして推進しているのだという。
これらの企業の片腕となるSOC(Security Operation Center)的な役割を果たすのがソフォスラボと呼ばれる分析班だ。グローバルに5拠点あるソフォスラボは、脅威データの収集・相関分析・解析を行っており、定義ファイルの開発や提供を行っている。ラボの存在はソフォスの根幹として、重点的に投資を行なっており、データセンターリソースの85%を割り当てている。また、人員も昨年度比で25%増やす。
こうした中で、販売体制も強化する。昨年度から開始した「チャネル・ファースト」は、販売パートナーを拡充することで、ソフォスをよく知るチャネルの強化を図るというわけだ。そして同時に、"ソフォスをよく知る"技術者育成にも取り組む。
「SOCいらずと言っているが、エンジニア、技術者がソフォスの製品を理解した上で提案できないと、エンドユーザーの企業さまに使ってもらえない。昨年度は92社、今年は新たなパートナー目標として300社を掲げているが、その中で熟知したセールスや技術者の育成が、今後の大きな柱になると思う」(纐纈氏)
300社ともなれば、決して大企業ではないソフォスにとってトレーニング環境の構築は大きな負担になる。そこで同社はオンライン・トレーニングを行い、多くのエンジニアがソフォスのポートフォリオを理解できるようにする。これは無償で提供され、習熟期間の短縮も図る。
同時に、認定資格制度も導入し、技術水準を担保できるようにする。今年度は認定セールスコンサルタントが300人、エンジニアが200人、アーキテクトが20人という人数を目標に据える。
最後に纐纈氏は「昨年度の売上目標を30%増とした時、社内は『できるかよ……』という空気だった。ただ、結果はほぼ達成できた。今年も20%以上の成長を実現していきたい」と語り、2年連続の高い目標を設定することで、社内外の更なる奮起を促していた。