Twitterは5月19日、東京・ラフォーレミュージアム六本木にて、モバイルアプリ開発者を対象としたイベント「Twitter Flock」を開催した。Twitter Flockはこれまでに、ロサンゼルス、シカゴなどの米国内の各都市や、ロンドン、ベルリンやソウルなどの世界各地で行われてきた。
今回、東京で開催されることとなった同イベントには、Twitter本社の担当開発者たちや、日本オフィスの関係者らが登壇。モバイル開発者向けプラットフォーム「Fabric」のさまざまな機能について紹介した。
「Fabric」とは?
Fabricは、「Crashlytics」、「MoPub」、「Twitter」により構成されるモジュールベースのモバイルプラットフォーム。基調講演で、同社 開発ディレクターのリッチ・パレット氏は、モバイル開発において重要なこととして、「安定性」、「コンテンツの拡散」、「収益化」、「ユーザー認証」の4つを挙げたが、これらを包括的にサポートするのがFablicだ。
Fablicでは、Twitterの埋め込み機能や、障害管理ツール「Crashlytics」、アプリ収益化のための広告管理ツール「MoPub」などを一元に管理。開発者はコードを数行加えるだけで、これらの機能を簡単に組み込むことができる。また、Fablicトータルでの利用も、部分的な機能の利用も可能となっている。
障害発見ツール「Crashlytics」
膨大な量のアプリが存在する昨今、ユーザーはレビューで評価の低いアプリを無視する傾向がある。クラッシュの回数が多く、低評価となっているアプリでは、ユーザー数の向上は見込めない。レビューに「アプリが頻繁にクラッシュする」などと、低評価の理由が書かれているのであればまだよい。アプリに対して余程ストレスを感じたのか、一文字だけのレビューなど、低評価に至るまでの詳しい状況がわからないレビューもある。
なぜアプリがクラッシュしたのか、それが何人のユーザーに影響を与えたのか、どんな状況だったのかを知ることは、アプリを成功させる鍵となる一方、複雑なプロセスでもある。
この問題を解決するためのツールが、Crashlyticsだ。バグの検出、アクセスや修正がすばやく行え、クラッシュを見つけるだけではなく、その引き金となったコードを識別することもできる。
また、Crashlyticsキットに導入されている「Beta by Crashlytics(Beta)」を利用すれば、提供開始前にテスターへアプリを配布し、フィードバックを得ることができる。
「Answers by Crashlytics(Answers)」では、DAUやユーザーセッションの総数、セッションの長さなど、アプリのパフォーマンスに関する指標をリアルタイムで計測することが可能だ。
電話番号でユーザー認証を行う「Digits」
ユーザー認証のツールとして、最近はSNSのアカウントを利用したソーシャルログインが一般的になりつつあるが、「Digits」ではログインに電話番号を用いる。国番号と電話番号を入れると確認コードがSMSで送られてくるので、ユーザーはその番号を入力することで、ログインが可能となる。
ユーザーにとっては、パスワードや、どのSNSでログインしたかということを覚える必要がなく、またソーシャルネットワークとは紐付いていないので、個人情報を含んでおらず、セキュリティ上の安全性も確保できるというメリットがある。
Digitsは、アプリに合わせてカスタマイズすることが可能。Webアプリに追加することもできる。同社によると、現在216カ国、32言語に対応しているという。
Twitterのシニアデベロッパーアドボカシー ロマン・フート氏は、「SMSのインフラを独自で作るのは複雑であり、またお金と時間がかかる。Twitterから提供するDigitsを利用して、開発者のみなさんには新たな市場を開拓していってほしい」とコメントした。
日本企業でのfablic導入事例
また同イベントでは、サイバーエージェント、リクルート、アップスジェイピーのエンジニアが登壇し、Fablicの活用事例を紹介した。
サイバーエージェントのフジモト氏は、「アプリの安定性を向上させるためにバグの発見ツールを検証したなかで一番使いやすかったのが、Crashlyticsだった」と述べた。CrashlyticsキットにAnswersやBetaという機能が導入されたことで、エンジニアではない人たちもアプリの品質に関わる数字をみることができるようになり、今では「755」や「Ameba」など、アプリのほぼすべてにFablicが導入されている。
たとえばAmebaブログでは、Crashlyticsを利用して、ユーザーがどのようにブログ投稿に失敗しているか追跡し、ブログ投稿の安定性を追求している。また、短い期間でリリースしたいアプリなどで、社内のほかのチームのエンジニアやデザイナにフィードバックしてもらう際にBetaを利用しているという。
同イベントでは、こうしたFablicのさまざまな機能について、コードを見ながら詳しく知ることができ、会場いっぱいに集まった参加者たちは真剣に耳を傾けていた。また会場には、参加者に向けてさまざまな食事やノベルティグッズなども用意されており、Twitterファンの開発者がさらに増えた1日となったのではないだろうか。
Twitter Japan 代表取締役の笹本裕氏は、「アプリ自体はまだまだ可能性を秘めており、今後、モバイルアプリの市場はさらに拡大していくと思う。次に出てくるモバイルアプリの最初の地点はシリコンバレーではないと考えている。その可能性をぜひ日本から生み出していきたい。それを実現するために今回、本社のFablicチームを呼んだ」と述べ、来場者に向けて積極的なイベントへの参加を呼びかけていた。