Infineon TechnologiesでHead of Product Marketing, Industrial & Multimarket Microcontrollersを務めるChristian Daniel氏

Infineon Technologiesの日本法人であるインフィニオンテクノロジーズジャパンは5月18日、都内で会見を開き、同社が今年より日本で本格展開を進める産業用機器向け32ビットARMマイコン「XMCシリーズ」に関する説明を行った。

同社にてHead of Product Marketing, Industrial & Multimarket Microcontrollersを務めるChristian Daniel氏は、「Infineonはエネルギー効率の向上、モビリティ、セキュリティの3分野にフォーカスしており、実際には"Automotive"、"Industrial Power Control"、"Power Management & Multimarket"、"Chip Card & Security"といった4つの事業部で事業を推進している」とし、主に自動車と産業機器に向けた製品を重視していることを強調する。

XMCシリーズは、特定用途向けマイコンとして開発されてきたもので、ARM Cortex-M0ベースの「XMC1000シリーズ」ならびにCortex-M4ベースの「XMC4000シリーズ」の2つのラインアップが用意されており、「家電/電動工具」「ビルディング オートメーション」「電源機器/エネルギー関係」「輸送・運輸」「FA機器」の5つのセグメントをターゲットとしている。このうち、FA機器が最大規模の市場となり、モーターコントロールや照明制御、電力関連、通信関連などに向けた製品が提供されているという。

XMCシリーズがターゲットとしている分野

XMC1000シリーズはエントリーレベルの「XMC1100」のほか、LED照明向け「XMC1200」ならびにモーターコントロール向け「XMC1300」がすでに提供されている。また、2016年第1四半期には、XMC1300シリーズにCAN機能を搭載したほか、64ピンパッケージまで対応する「XMC1400」を提供する計画であるとする。

XMC1000シリーズのロードマップ

一方のXMC4000シリーズは、エントリーレベルの「XMC4100/4200」のほか、コアの動作周波数を120MHzに引き上げ、イーサネット対応などを施した「XMC4400」ならびに1MBフラッシュと160KBのRAMを搭載し、SDカードインタフェースなども備えた「XMC4500」を提供しているが、2016年第1四半期の提供に向け、コアの動作周波数を144MHzに引き上げ、6ch CANに対応させた「XMC4700」ならびにEtherCATに対応させた「XMC4800」の開発も現在進められているという。

XMC4000シリーズのロードマップ

またDaniel氏は、マイコン単体では企業の抱える課題を解決することが困難との考え方からInfineonでは、さまざまなソリューションを提供することで、そうしたユーザーの課題解決を目指しているとする。例えば、各種の評価キットの提供はもちろんのこと、MATLAB/Simulinkのようなツールとの連携もエコシステムとして提供しているほか、EclipseベースのIDE「DAVE」は、GUIを介してLLD(Low Level Driver)の生成などを行うことが可能であり、電源開発用などといったような特定用途向けにカスタマイズして提供することも可能だという。

XMCシリーズは評価キットのほか、パートナー各社が提供するソフトウェアとの連携など、エコシステムが形成されていることが特徴だという

さらに、「XMC1000シリーズは家電や電動工具関係、XMC4000シリーズはFA関連でグローバルで成長している。日本でも半導体デバイス単体ではなく、システムレベルでの問題解決が半導体ベンダに要求されるようになってきた。我々はそうした対応をこれまで長年にわたって行ってきており、そうしたニーズが高まってきた今、日本で本格的にビジネスを開始することを決定した」と、このタイミングで日本の産業機器市場を本格的に開拓していく意味を語る。

なお、現在のXMCシリーズが搭載しているARMコアは前述のとおり、Cortex-M0もしくはCortex-M4だが、ARMではCortex-M0+やCortex-M7といった新たなコアの提供を進めている。こうした新コアを搭載したラインアップを追加する可能性を同氏に聞いてみたところ、「現在の市場ニーズに対してはCortex-M0やCortex-M4で十分対応できていると考えている。しかし、カスタマのニーズは常に高い方向へと進んでおり、そうした次世代の機器を実現したいというニーズが生まれてくることを考えると、Cortex-M0+やCortex-M7への対応も検討している。具体的には2~3年程度で製品を出せるような感覚でとらえてもらえればと思っている」とし、あくまで特定分野でのニーズに対応することを目的とした形で、さらなる製品開発を進めていくことを語ってくれた。

電動バイクやFA機器を対象としたXMC4000シリーズの評価ボードを2枚搭載したモータアルゴリズム駆動のデモ機材。1枚あたり2つのモータコントロールが可能。CANバスを経由して信号のやり取りをしている。マニュアル(手動)でモータ(ホイール)を回転させることも可能

XMC1000シリーズの電動工具向け評価ボードを搭載した電動ドリルのデモ。起動初期のトルクの状態などを再現することが可能。ちなみに、同じことを実現しようと思うと、他社ではCortex-M3相当の演算能力が必要だが、同社では独自のコプロセッサを搭載することでCortex-M0で同レベルの駆動性能を実現しているとする