2015年4月9日、「パブリッシャー・マネタイゼーション研究会」が発足された。同研究会の代表幹事には、デジタルインテリジェンス 代表取締役の横山隆治氏が就任し、SSPを提供するPubMaticの日本法人がメインスポンサーを務める。

「パブリッシャー・マネタイゼーション研究会」とは、広告主視点だけでなく、パブリッシャー視点からもデジタル市場のあり方を考え、市場がより発展する基盤を整えるべく、広く議論し施策を実践することを目的に設立されたもの。

定期的に勉強会の開催やディスカッション、セミナー、施策の実施、報告会などを行い、「デジタル市場におけるパブリッシャーの価値向上」や「同市場への提言と最適化」を図っていく。

同研究会の発足に伴い、パブマティックの米国本社 PubMaticにてCEOを務めるRajeev Goel氏(以下、ゴエル氏)が来日。日本市場の現状や課題、それに対する同社の取り組みなどを聞いてきた。

PubMatic CEO Rajeev Goel氏

世界3大SSP (PubMatic・Admeld・rubicon project) の1つといわれる同社が日本市場に参入した時期は、ちょうど1年前の2014年4月のこと。同年1月にソネット・メディア・ネットワークスと業務提携を行い、7月には業務拡大を図るため、日本法人社長に前川洋輔氏を迎えた。

同社のSSPは、2015年3月時点において、約60社の国内パブリッシャーが導入し、20以上のDSPとパートナー提携を実施。国内のデータセンターも設けたほか、本年度中には日本市場向けスタッフを5名増やす考えだ(2015年4月時点、在インドのオペレーションチームを含め8名)。

では、ゴエル氏は、この1年をどのように捉えているのだろうか。

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ゴエル氏 : 大きな変化として、パブリッシャーが抱く「プログラマティック・バイイングへの恐れ」が軽減されたことがあるのではないでしょうか。むしろ、これを1つのチャンスとして捉え、「どのようにすればコストを抑え、収益性を上げることができるのか」といった具合に関心が高まっているとも言えます。

一方で、プログラマティックへの取り組みが増えたかと言うと、そうでもありません。今のところ、バズワードと言いますか、流行り言葉でしかないのかもしれません。というもの、「プログラマティック・バイイングとは何か」ということや、そのメリット・デメリットへの理解が深まっていないのだと思います。

まずは、パブリッシャーの意識を変えていく必要性があるのだと感じましたね。

―― 意識を変えるため、具体的にはどのようなことを行っていくのですか

ゴエル氏 : やはり、啓蒙活動が重要だと考えています。今回の「パブリッシャー・マネタイゼーション研究会」への協賛もその1つですが、最適化サイトでのマネタイズ方法を記したホワイトペーパーの配布など、積極的に活動しています。しかし、理解の定着は、日本だけでなく各国も同様ですが、2,3年はかかるものだと思っています。

―― 日本は特に、広告単価が低いなど、デジタルパブリッシャーの立場が弱いといいますが、何が課題なのでしょう

ゴエル氏 : 大きく分けて、2つあると思います。

1つ目の違いは、データの活用に関してです。米国と比較すると日本はまだ、データを活用した配信が進んでいないように考えます。パブリッシャーは今後、モバイルであれば、位置情報やアプリのIDデータなどを管理・活用し、精度の高い配信を実現することで、収益性を高めていく必要性があるでしょう。

2つ目は、日本市場の特徴として、大手代理店に案件が集中しているということがあげられますが、例えば、パブリッシャー側が直営業であまり案件を持つことができない場合でも、プログラマティック・バイイングを活用することで、多くの広告主と(間接的に)取引が可能となります。

―― 日本市場へは、PubMaticのほかrubicon projectも参入し、ローカルSSP事業者も多く存在しますが、どう差別化していますか

ゴエル氏 : 弊社は、パブリッシャーサイドにて9年間事業を展開してきました。これにより得ることができた知見やデータ、そして技術が他社とは異なる点だと自負しています。

たとえば、弊社は約300名のエンジニアを抱え、積極的な技術投資を行ってきました。これにより、多くのIPを保有することができたほか、モバイルやネイティブ、動画といったすべての広告フォーマットへの対応を実現しています。

また、9年にもわたりSSPを専門に事業を行ってきたことや、日々約65テラバイトのデータを扱っていることで、他社と比較し、豊富なデータと知見を蓄積していると思います。これは、パブリッシャーのニーズにあったパッケージの提供や価格設定のサポートを可能とするだけでなく、製品そのものに奥行を与えています。

―― 2015年4月時点では、動画広告やネイティブ広告への対応は米国のみのようですが、日本でリリースする予定はありますか

ゴエル氏 : そうですね。これらの広告フォーマットは米国でも好評ですし、まずは日本のローカルバイヤーの統合を行って、2015年内には提供を開始したいと思っています。

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ゴエル氏は最後に、日本のデジタルパブリッシャーに向けて、「プログラマティック・バイイングを恐れず、チャンスと捉えて挑戦してほしい」と訴えた。

例えば、同社がメインスポンサーを務めるパブリッシャー・マネタイゼーション研究会や勉強会、セミナーなどに参加し、プログラマティックに対する理解を深めていくとよいのではないだろうか。

なお、パブリッシャー・マネタイゼーション研究会への入会は、デジタル広告を運用するパブリッシャーや、パブリッシャー向けにソリューションを提供するベンダーを対象とし、幹事による選考が伴うそうだ。