高速なソフトウェア構成管理(SCM)ツールを開発し世界中の企業に提供しているPERFORCE SOFTWARE。同社のグローバルマーケティング担当副社長、クリス・フーバー氏と、アジア・太平洋・南米地区のセールスディレクター 、マイケル・アレッシオ氏に、現在のソフトウェア開発の課題と、その解決策について話を聞いた。
高速なソフトウェア構成管理ツールで市場を席巻
──まずはPERFORCE SOFTWAREについてご紹介いただけますか。
マイケル氏 当社は1997年に、クリストファー・セイワルドによって設立されました。彼はそれまでデータベース関連の仕事をしていて、ある頃から、ソースコードの活用が十分にできないことに疑問を感じるようになったのです。そこで、当社を立ち上げて高速なソフトウェア構成管理ツールを開発・提供したところ、市場から高く評価され、事業は目覚ましい成功を収めることができました。おかげさまで設立以来、すべての四半期で高い業績を継続し続けています。現在、我々は3つの大陸の4地域でビジネスを展開しており、顧客はグローバルで10,000社以上に及んでいます。またその多くが世界的に名高い企業ばかりなのも特徴です。
──日本でのビジネスはいつ頃から展開しているのですか。
クリス氏 2001年に、東陽テクニカさんからアプローチを受け、それを契機に日本でのビジネス展開がスタートしました。以来、東陽テクニカさんとのパートナーシップは続いており、我々の製品を日本語で使えるようにするなど、さまざまな支援を受けています。そうした支援は、2015年3月5日にリリースされた日本語でリリース予定の新製品「Perforce Helix」にも生かされています。日本市場では二桁成長を続けており顧客も200社以上となりましたが、そうした成功も東陽テクニカさんとの素晴らしいパートナーシップのおかげだと感謝しています。
──ソフトウェア構成管理の必要性についてお聞かせください。
クリス氏 ソフトウェアというのは、時間をかけて繰り返しの反復作業を行いながら構築するものですが、その作業はとてもデリケートです。なぜならば、人間が話し言葉を間違えるのと同じように、マシンの言語にも間違いが含まれてしまうからです。そうした間違いを確実に、そして効率的に正すためには、ソフトウェア構成管理ツールで統一的に管理しながら修正していく必用があります。特に最近のソフトウェア開発では多くの人間が携わるようになり、多数のコードやブランチが並行して存在します。また、ソフトウェアのバージョンも多岐にわたりますので、ソフトウェア構成管理ツールの必要性はますます高くなっていると言えるでしょう。
IoTで大きく変わったソフトウェア開発
──現在のソフトウェア開発には、どのような課題があるのですか。
クリス氏 いま、ソフトウェア開発の世界では大きな変化が起きています。これまでのソフトウェア開発は、構築してデリバリーを行えば終了していましたが、現在はそうではなくなりつつあります。なぜかというと、ますます多様なオブジェクトのなかにソフトウェアが組み込まれるようになってきているからです。いわゆるIoTが良い例でしょう。IoTのような世界では、物理的なオブジェクトの差別化を、物体のかたちや重量、塗装などではなく、ソフトウェアで行うといったケースがしばしばあるのです。
そうなってくると大きな課題となるのが、従来のソフトウェア構成管理ツールはソフトウェアだけを対象にしているため、物理的なオブジェクトへの反映についてほとんど考慮されていないという事実です。またこれと合わせて、CADや動画のような大容量のファイルへの対応が難しいというのも問題です。たとえば、トヨタのプリウスのソースコードは1千万行以上とも言われており、そこには何千もの設計ファイルやデザインファイルなどが紐付いていますが、今やこれらすべてを統一的に管理し続けられるようにしなければならないのです。ここで管理されているファイルは、単に物理的な製品をつくったり、電子回路の設計に必用なものなだけではありません。生産された製品にその後、問題が生じた場合には、その製品を作ったときに使われていたソフトウェアやデザイン、回路の設計図などのバージョンを知る必要があるのです。この問題はとても重要で、たとえば医療機器や航空機なんかを想像していただければわかりやすいのではないでしょうか。
そしてさらに大きな問題は、知的財産の保護についてです。自社の多くの設計者やデザイナーらが努力を重ねた結果である知的財産をいかに他社に盗まれないようにするか──これは、もはや世界的な課題となっているのです。
製品開発のためのコラボレーションから知的財産保護まで可能な新プラットフォーム
──そうした課題を解決するには、どうすればいいのでしょうか。
クリス氏 ここまで挙げたような課題のすべてを解決すべく我々が開発し、最近リリースしたのが、「Perforce Helix(以下、Helix)」という製品になります。Helixは、複雑な製品開発のための強力で新しいコラボレーションプラットフォームです。当社が開発し世界で広く知られているバージョン管理エンジンの上にHelixは成り立っており、得たい情報の最新版がどこにあるのかを、プロジェクトに関わるすべての人に提供します。扱うことのできるファイルの種類も、ソースコードやCADファイル、マルチメディア、成果物テンプレートなど、非常に多岐にわたります。これにより、製品開発においてHelixが唯一の正確な情報源となって、デザインファイルやテストファイル、ソースコードといった資産のすべてを管理できるのです。
またHelixには、ソフトウェア開発者を支援する各種のツールも用意しています。例えばGitエコシステムや、Dropboxのようなストレージツールなどです。
そして特筆すべきは、知的財産保護のための独自の解析ツールを備えている点です。人々がどのように資産にアクセスしているかをモニタリングし、本来やってはいけない行動をしていないかどうか監視することができるのです。このツールには自動学習機能があり、通常業務での資産へのアクセスを日々学習して、異常な行動を検知することが可能です。
──最後に、日本の企業へのメッセージをいただけますか。
マイケル氏 Helixは、あらゆるプロダクトに関連するすべての人々を結びつける役割を担います。そして貴重な資産を保護し、DevOpsにおける継続的デリバリーを可能にします。日本の市場は今後ますます成長していくと我々は考えており、投資を積極的に進めています。東陽テクニカさんとのパートナーシップもさらに強固なものとしながら、より多くの製品の日本語対応を行うなど、日本のものづくりに貢献していきたいですね。