Microchip Technologyは5月12日(米国時間)、デジタル電源制御に特化した16ビットDSP「dsPIC33EP「GS」ファミリ」を発表した。
同ファミリは、従来品である「dsPIC33FJ「GS」ファミリ」の後継に位置づけられるもの。プロセスの微細化による低消費電力化やプロセッサ性能の向上(従来の50MHzから70MHzに向上)により、複数の系統を処理することを可能とした。
また、「適応制御アルゴリズム」の採用により、さまざまな高速変動に対応する制御手法を条件に応じて切り替えることが可能となっているほか、条件変化に対する動的応答性を向上させる「非線形予測アルゴリズム」、ならびに過去データなどから次に起きる挙動を予測する「予測アルゴリズム」なども搭載し、マイクロ秒オーダーでの高速制御を可能としている。
加えて、ハードウェア的にもパイプライン方式を採用した12ビットA/Dコンバータ(ADC)の採用したことで、1つのADCながら5ch分のADCとしての動作が可能で、ADCレイテンシ300nsおよび従来比で4倍高速となる総スループット最大16Mspsを実現した。また、デジタルコンパレータにより、しきい値との比較結果に基づいて割り込みを生成し、CPU負荷の軽減を可能としたほか、ハードウェアサンプリング機能を搭載したことで、ADCの精度を向上させることも可能となっている。
プロセッサとしても16個のワーキングレジスタを3組搭載。各レジスタセットに特定の割り込み優先度を割り当て可能としたほか、割り込みサービスルーチン(ISR)呼び出し間で占有的なデータ保持を可能とすることで、レジスタ値の退避/復元の必要性を削減することができ、従来ソリューション比で補償器を最大50%高速化したとする。
このほか、×4~64まで対応可能なプログラマブルなゲインアンプも搭載したほか、12ビットD/Aコンバータ(DAC)とアナログコンパレータを組み合わせることで参照電圧の高精度化を実現したほか、インフラ系など常時稼働が求められ、メンテナンスのためにシステムを停止する、といったことができない場合でも、容易にファームウェアをアップデートできるようにフラッシュメモリ64KB品では、フラッシュメモリを32KBずつ2つのパーティションで分けて、300ns未満の速度でその切り替えを可能とする「ライブアップデート機能」も搭載。これにより、システムを停止させたくない場合でもファームウェアのアップデートが可能となった。
同ファミリは、従来ファミリ比で消費電力を80%削減しているほか、ローエンドモデルのパッケージサイズは従来よりも小型化された4mm×4mmを実現。例えば、100Wクラスの電源モジュールを構成しようと思った場合、モジュールとしての効率を0.26%改善、拡散熱量を4%削減できるほか、インダクタンスやコンデンサの小型化を含めた電源回路全体の小型化を図ることができるようになるという。
すでにサンプル出荷を開始しており、価格は大口注文時で1.10ドルから、としている。
また、デジタル電源向けMPLABスターターキット「DM330017-2(製品番号)」も用意。独立した降圧型および昇圧型DC/DCコンバータのほか、LCD、ステータスLED、温度センサなどを搭載し、USB経由オンボードデバッグならびにプログラミングでデジタル電源開発の勉強が可能となる教育用キットで、こちらは129.99ドルにて入手が可能となっている。
なお、同社は2015年7月にデジタル電源技術に関するカンファレンスを東京・品川にて開催する予定としている。