処分地選定の調査に着手できていない高レベル放射性廃棄物最終処分に関し、国民の理解を得るためのシンポジウムを全国9カ所で開催する、と経済産業省が4月28日発表した。5月23日の東京開催を最初に、6月28日まで高松、大阪、名古屋、広島、仙台、札幌、富山、福岡各市の順で開催する。

経済産業省は、「近年の政策の見直しの背景や内容、今後の方針などを伝え、各地域の国民の皆さんと、この問題を一緒に考えていきたい」とシンポジウム開催の狙いを説明している。

高レベル放射性廃棄物の扱いについては、海外諸国同様、日本も地下深く埋める「最終処分」という基本方針が決まっている。「最終処分」とは、埋めてしまった後に人間が一切の管理をしないでも安全、保安が確保できる状態にするというのが、国内外の一致した考え方とされてきた。

一方、いきなり地層処分に向かうには不確定要素が多すぎるという理由から、最終処分の前に一定期間、人間が管理できる「暫定保管」の段階を設けるべきだとする日本学術会議の提言が、2012年9月に続き、4月28日にも再度、公表されている。

経済産業省は、一昨年から政策の見直し作業を進めており、総合資源エネルギー調査会に設けた電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 放射性廃棄物ワーキンググループ(WG)が昨年5月、「放射性廃棄物WG中間とりまとめ」を公表している。この中で「『管理』と『最終処分』が決して排他的関係になるものではない」という日本学術会議の提言に配慮したとみられる記述を盛り込みつつ、「長期にわたる制度的管理(人的管理)によらない『最終処分』を可能な限り目指すことが必要であり、そのため、現世代の責任として、最終処分に向けた取り組みを進めることが必要であると考える」という方針を示した。

5月23日から開かれるシンポジウムでは、総合資源エネルギー調査会 放射性廃棄物WGの委員長を務める増田寛也 野村総合研究所顧問ら有識者による基調講演や解説のほか、資源エネルギー庁、原子力発電環境整備機構(NUMO)による政策・事業説明、ジャーナリスト、専門家などを交えたパネルディスカッションを行う、としている。

経済産業省は、「地層処分ポータルサイト」を開設したことも明らかにした。この中の「地層処分とは?」というページで、「長期間にわたり私たちの生活環境から遠ざけることができ、実現可能な方法として地層処分が最もよい方法だということが、世界共通の認識となっている」としている。