ニュースアグリゲーションアプリ「SmartNews」を提供するスマートニュースの広告事業責任者 川崎 裕一氏が5月1日に、同社の公式ブログで「ネイティブ広告におけるクレジット表記について」と題した記事を公開している。
川崎氏がこのような投稿を公開した理由として、先日インターネット広告推進協議会(JIAA)が発表した「ネイティブ広告に関するガイドライン」と、その周辺で話題となっているノンクレジット問題が挙げられる。
そもそもネイティブ広告とは何か?
JIAAの定義によれば、「インフィード広告」と「レコメンドウィジェット」「タイアップ」の3種類がある。特に最近伸びている広告がインフィード広告でスマートニュースのみならず、SNSの通常の投稿に紛れて出てくる同じ枠を利用した広告はすべてこれに当たる。簡単に言えば「普通のコンテンツと同じように出てくる」ものがインフィード広告だろう。
良識あるネット企業の多くは、広告であることを明記してコンテンツを配信しているが、先ほど「ノンクレジット問題」とした一部の企業は、クレジット、つまりそのコンテンツの出どころを指し示す表記を行っていない場合がある。広告対価を得ているにもかかわらず、通常の編集記事のように振る舞う。一般常識にあてれば一種の騙しともとれる話だが、Webの世界では、それを是としている企業があるのも事実だ。具体的にこの記事では触れないものの、Yahoo!ニュース個人で山本一郎氏が触れたまとめなど、少し情報をたどると見えてくる。
今回のブログで川崎氏は、「誘導元であるSmartNews上でのクレジットと、誘導先であるランディングページ(ユーザーを誘導する企業のWebページ)上でのクレジットの両方で、JIAAのガイドラインに準拠した審査基準に則って日々厳密な審査を実施している」とSmartNewsの姿勢を明らかにする。
同社は以前、立ち上げ時期にWeb媒体の記事キャッシュを取得する行為を媒体に無断で行っていた過去を持つ。ニュースアグリゲーションアプリは今でこそグノシーやAntennaなど、複数のアプリの競争もあり一定の地位を獲得しているものの、黎明期からここ1年を見ても諸問題が起きていた。SmartNewsは初期こそ、媒体との間でちょっとした問題を起こしたが、その後、真摯に媒体と向き合い、直接記事の誘導を行う専用ページ「チャンネルプラス」などのサービス提供もあり、現在は一定の良好な関係を築いている。
もちろん、アグリゲーションアプリやバイラルメディアは「中間搾取」といった非難を受けるケースがあり、実際に酷い盗用が見られるメディアもある。ただ、PVの流入が無視できない存在となりつつある以上、今後もSmartNewsを始めとする媒体は存在し続けることだろう。
だからこそ、健全なWebの世界を維持するために、無料閲覧、広告掲載によるビジネスモデルの運用は欠かせないであり、最低限のモラルが媒体には求められているわけだ。
川崎氏の「広告表記をしないことで消費者を騙し、広告のクリック率を高めることは短期的なビジネス上の利益につながるとしても、絶対にすべきではない」という言葉は、Webがこれからも無くてはならない存在だからこそ、強い意志をもって書いたものだと思われる。ネイティブ広告だけでなく、一部アプリでは、流れるコンテンツがSNSや競合アプリよりも多い割合で広告コンテンツが流れるという指摘もある。ユーザーが楽しく、快適にWebを楽しめる世界が今、問われていると言っても過言ではないだろう。