国内120拠点、世界146カ国の販売・サービス網を担うインフラを整備
POS製品や計量器のメーカーとして国内屈指の実績を有する寺岡精工。創業80周年を迎えた同社は、近年では製品と一体化したクラウドサービスを提供するなど、POSレジ、ラベル製品を主軸に革新的な取り組みを続けている。
その好例と言えるのが、2005年頃から同社が掲げている「チェックアウトレボリューション」だ。レジでの待ち行列改革を目指したこの戦略の下、同社は数々の革新的な試みを展開中だ。例えば、「スキャニング」と「会計」を分離するというまったく新しい発想のPOSを開発。商品のスキャニングやプリセット登録、割引処理をレジチェッカーが行い、会計をセルフ化することで、レジの生産性を約160%も向上することに成功している。
ほかにも、バーコードラベルをフリーフォーマットにして、好みの長さで利用できるようにするなど、高い技術力と豊富な業界での経験・ノウハウを生かすことで、他の追随を許さない地位を獲得しているのである。
ビジネスに欠かせない製品を提供している同社だけに、サービスネットワークも全国に展開している。営業所や出張所、サービスステーションやグループ企業も合わせて120カ所以上の拠点で国内全域をカバー。また海外展開も積極的に行っており、世界146カ国に販売・サービス網を展開することで、世界中に高品質な製品・サービスを提供している。
ビジネスや拠点の拡大に伴い、IBM Notes/Domino 9への移行やグローバルコミュニケーション基盤の整備も予定していた寺岡精工では、数年前より基盤インフラの見直しを行っていた。その際、インフラがボトルネックになることを避け、グループ企業の従業員約3300名が快適に利用できるシステムとするべく、これまでは一部のシステムにのみ採用していた負荷分散機能をネットワークの機能として盛り込むこととなったのである。
寺岡精工 ビジネスサービス部 インフォメーションサービス課の係長、夏堀貴仁氏は、「既存システムのパフォーマンス向上を目指しながら、将来的なシステム増強にも耐えられる基盤整備を進めることを検討しました」と、振り返る。
将来の要件変更にも容易に対応できる製品を検討
当時、寺岡精工では安価なロードバランサやLinux上で稼働する自前のロードバランサが複数稼働していた。しかしながら、パッチのアップデートやバージョンアップ時に必ずサービス停止が必要となったり、アプリケーション担当者が個別に導入していて統合的に状況を把握しづらかったりなど、運用上の限界に直面していた。
「稼働するサーバが200台になるなか、ビジネススピードに合わせたサービス提供を続けるには、すべてのロードバランサを統合して最適化する必要があると感じました」(夏堀氏)
こうして、2013年末より各社のロードバランサの比較検討を開始。移行した後も、環境整備に向けて新たに社内で対応しなければならないケースも数多く出てくることが想定されるため、社内のエンジニアでも操作に習熟できる使い勝手の良い製品であることなどに着目した結果、A10ネットワークスの「Thunder ADC」の導入が決定した。
夏堀氏は言う。「基盤整備の過程でどのような要件が生じるかわからない状況なので、どの機能を使うことになるか導入段階ではわかりません。しかし、使い始めてから使いたい機能が出てくるたびにコストがかかるのでは、使いたい機能も使えなくなってしまいますので、アプライアンスに備わるすべての機能を利用可能なオールインワンのライセンス体系は魅力的でした」
2014年初めに構成が決まり、3月には導入にこぎつけた。可能な限りシンプルな構成にするため、これまで使っていた複数のロードバランサを「Thunder 1030S ADC」に集約。IBM Notes/Domino 9や3000人を超えるユーザー認証の中核を担うActive Directory フェデレーション サービス(ADFS)、一部メールサービスに利用しているSMTPサーバ、外部からの安全なアクセスを可能にするSSL-VPN装置など、さまざまなサービスの負荷分散を実現した。
寺岡精工のネットワーク構成図 |
「既存のロードバランサの組み換えなども、すべて自分たちで行うことができました。切り替え時のサービスタイムラグは5分ほどに抑えられ、業務に支障を来さなかったのが何よりも大きかったです」と、夏堀氏は笑顔を見せる。
アプリケーションのレスポンスタイムが10分の1に向上
Thunder ADCの導入後、すぐに実感できた効果がアプリケーションのレスポンス向上だ。とりわけ、同社ではJavaScript を用いたサービスが多いことから、アクセス時にロードするオーバーヘッドが大きくなりがちだった。それが、Thunder ADCのHTTP/HTTPS圧縮技術を利用したところ、HTMLやJavaScriptのレスポンスタイムが10分の1程度にまで改善したのだ。
「国内だと1秒ぐらいのレスポンスの違いはあまり感じられませんが、レスポンスタイムの影響が大きな海外拠点で調査を行ったところ、十分な効果を発揮していることを確認できました」(夏堀氏)
この3月には、Thunder ADCによるSSL処理のオフロードも実施。Webサーバを社内インフラに格納し、外部からのアクセスはHTTPSで暗号化するという仕組みをロードバランサの機能だけで実現したのである。
「ロードバランサ内でSSL証明書を取得できるので、あらためてサーバに証明書を設ける必要もなく、わずか10分ほどで設定が完了しました」と夏堀氏。
現在、寺岡精工では、DDoS攻撃などが行われた場合も外部に公開していない回線に切り替えてサービスを維持するGSLB(Global Server LoadBalancing:広域負荷分散)のThunder ADCへの実装を検討中だ。また、グローバル環境におけるコミュニケーション基盤として利用開始したMicrosoft Office 365についても、通常の3~5倍程度のセッション数が発生しているため、Thunder ADCを通すことで負荷分散する仕組みの導入を考えているという。
「A10ネットワークスのThunder ADCは、従来のロードバランサという言葉から思い浮かべるイメージをはるかに越えて、いろいろなことができることがわかったので、効果を見込める機能は積極的に利用していきたいですね」と、夏堀氏は今後の抱負を語った。