タイププロジェクトは24日、記者発表会を開催し、Webサイト上で文字の太さやコントラストを細かく調整することができる新書体「TP明朝フィットフォント」を発表した。価格は1フォントあたり2万4,000円。タイププロジェクトのオンラインショップ限定でダウンロード販売する。
このたび発表された「TP明朝フィットフォント」は、縦画と横画の太さの比率を変えられる「コントラスト」という概念を導入した日本語フォント「TP明朝」に関して、Web上のスライドバーでウエイトとコントラストの数値を調整し、目的や好みに応じたフォントを購入できるサービスだ。
「TP明朝」は2014年2月にリリースされた比較的新しいフォントで、最近ではアニメ「アルドノア・ゼロ」での印象的な使用方法で注目を浴びたほか、現在TOTOギャラリーで開催されている藤本壮介氏の個展「未来の未来」などで利用されている。
すでに販売されているリテール版のTP明朝では、3つのコントラストにそれぞれ6つのウエイトを展開し、合計18フォントを取りそろえている。一方、本日より提供を開始する「TP明朝フィットフォント」では、コントラスト(横画の太さ)が21段階、ウエイト(縦画の太さ)が51段階、合計1,071のフォントを用意している。
コーポレートフォントの需要増加を背景に開発
同社の鈴木功代表取締役から、同フォントサービスの概要が語られた。従来のフォントのウエイト・コントラスト展開を大幅に広げた「TP明朝フィットフォント」がリリースされた背景には、近年、企業などのブランドを表現する手段として需要が高まっている「コーポレートフォント」があるという。
フォントを独自にカスタマイズしたいという問い合わせが多く寄せられたことから、同社では2013年にアジャスタブル機能を開発。これにより、ウエイトやコントラストを変更した場合でも、字画の比率が適正で常にバランスのとれた状態を保つことが可能になり、これまでは個別に企業の要望に対応するために活用してきた。今回発表された同フォントサービスは、その機能をさらに拡充することで、ブランドに最適なフォントの導入を迅速に可能にするサービスとしてリリースされたという。
また、同社のタイプデザイナーである両見氏が続けて、同フォントの「コントラスト」の概念を解説。横画の太さに合わせ、縦画だけでなく、跳ねや払いなどの太さも微調整している。そして、リテール版で18種展開しているコントラストには存在しない、多様なバランスのフォントが欲しいという要望が多く寄せられたほか、解像度が低いディスプレイで表示すると明朝体の横画が潰れてしまうこともあることから、モニタの解像度にあわせたコントラストを選びたいという要望など、さまざまな声が寄せられたという事例を挙げ、今回のフォントサービスリリースの理由を語った。
他社欧文フォントに合わせての調整も可能
同フォントサービスでは、他社の欧文フォントに合わせた調整も提案。同社が厳選したベーシックな書体や人気の高い書体については、Webサイト上でプレビューを見ながら、「TP明朝」のウエイト/コントラストを調整できる。会見では、両見氏が実際にWebページ上でコントラストを調整してみせる実演が行われた。
また、欧文フォントに合わせて調節したTP明朝を、組版アプリケーションの合成フォント機能で利用することで、和欧のウエイトとコントラストが一致した最適な状態で使用可能となる。こうした欧文フォントとの調整機能は、欧文コーポレートフォントが指定されているグローバル企業や、オリジナルで制作した欧文フォントを使用するデザイン会社など、欧文と美しく調和する明朝体を求める企業ニーズによるものだという。
なお、同フォントサービスについて、Webフォントとしての提供は予定しておらず、今後の課題として考えているとのこと。フォント名はコントラスト(CN)とウェイト(WT)の軸に設定した数値が記されるということだ。