東北大学は4月7日、日本の湖沼に多く生息しており代表的な動物プランクトンである「ミジンコ(学名:Daphnia pulex)」が、遺伝的多様性が乏しく4タイプの遺伝子型(クローン個体)しか分布していないこと、それらすべてが別のミジンコ種との雑種であること、在来種ではなく北米から侵入した外来種であることを明らかにしたと発表した。
同成果は、同大大学院生命科学研究科の占部城太郎 教授の研究チームによるもの。詳細は陸水・海洋学の国際雑誌「Limnology and Oceanography」電子版に掲載された。
ミジンコは、1~2週間で成長し、成熟すると普段は雌だけで子を産む単為生殖によって繁殖することが知られているほか、餌不足など環境が悪化すると雄を産んで有性生殖を行い、乾燥などにも耐えられる休眠卵を産卵することなどが知られている。
近年の研究から、Daphnia pulexは、単独の種ではなく、少なくとも8種類以上の種を含んでいることが判明してきたが、日本のミジンコはこのうち、どの種類に相当するのか、あるいは日本の固有種であるのかはよくわかっていなかった。そこで研究チームは日本国内の300カ所以上の池や湖で調査を実施、採集したミジンコのミトコンドリアDNAと核DNAの遺伝情報の解析を行ったという。
解析の結果、4タイプのミトコンドリア遺伝子型が存在し、いずれも北米に生息するミジンコと良く似た塩基配列を持っていることが判明。核DNAについても解析したところ、それぞれのタイプのミトコンドリア遺伝子型は1つの核遺伝子型しかないことが判明したほか、すべての個体が、北米に産し、日本には生息していないDaphnia pulicariaという別のミジンコ種との雑種個体であることも判明したという。
さらに、これらのミジンコがいつごろ日本にやってきたのかをミトコンドリアDNAを用いて調べたところ、西日本で採集された2タイプはごく近年に侵入してきた個体であることが判明したほか、広く分布していた残り2タイプは、700~3000年前に日本に移入してきたことが判明したという。
この結果を受けて研究チームでは、2個体のミジンコがどのように日本に侵入し、定着したのかという謎が生じたとするほか、日本在来種が駆逐された可能性なども示されたとしており、日本の淡水生物の由来や成立に関するこれまでの見方に変更を迫るものとなるとコメントしている。