東北大学は、光パルスの照射により磁性体の磁気秩序を高速で制御することに成功したと発表した。

同成果は、同大 大学院理学研究科の松原正和准教授らによるもの。詳細は「Nature Communications」に掲載された。

スピントロニクスの活用に向け、各所で研究が進められているが、今回、研究グループは、強磁性半導体であるEuOが、電気伝導を担うキャリア(この場合は電子)の密度に応じて磁気相互作用を大きく変化させる点に着目。EuOに不純物(今回はGd)をドープしてキャリア密度を増加させたところ、強磁性転移温度(キュリー温度)が上昇することを確認した。

調査の結果、Gd濃度が低い(キャリア密度が低い)試料では光パルスの照射が磁気相互作用を強め、光照射によるキャリア密度の増加が磁気相互作用を強めるという予想と合致した結果が得られたほか、逆に、Gd濃度が高い(キャリア密度が高い)試料では光パルスの照射が磁気相互作用を弱めるという結果が得られたとする。この結果は、キャリア密度を精密に制御することにより、磁気相互作用を意図的に増強することも減少させることもできることを示唆していると研究グループでは説明するほか、そのどちらの場合においても、磁気秩序の変化は1ピコ秒程度の極短時間で起こることも判明。これらの知見は、今後、光による超高速磁気制御を実現するための物質設計や材料開発に向け新たな指針を与えるものとなるとコメントしている。

強磁性半導体Eu1-xGdxOにおいて、ポンプ・プローブ非線形磁気光学分光法により得られた磁気秩序変化の超高速ダイナミクス。ポンプ光照射後、1.5ナノ秒までの時間における変化を示したもの。Gd濃度を変化させることで、磁気相互作用の大きさを増強あるいは減少させることができることが確認された。挿入図はポンプ光照射後5ピコ秒までのダイナミクスの拡大図で、1ピコ秒以下の時間で磁気相互作用に変化が起こることが示された